2015年6月30日火曜日

ギリシャ債務に関するEU市民の嘆願書とQ&A

 市民運動によって呼びかけられている嘆願書がありましたので、紹介します。嘆願の主体は「ヨーロッパの市民」となっていますが、署名者についての選択肢としてはヨーロッパ外の国も選べるようになっています。


本当の『木を植えた男』の話 インド


 ジャン・ジオノの小説『木を植えた男』は、荒野で植樹を続けるエルゼアール・ブフィエという男の話で、ジオノがはっきりさせなかったため当初はノンフィクションだと思われていたが、実はブフィエは実在せず、すべてはジオノによる創作であった。
 しかし、インドのケララ州に住むアブドゥル・カリーム(66歳)は、まるで本当にブフィエがいたかのような人物である。

社会運動と協力して環境と貧困の問題に取り組むヴァチカン

 "No Logo" (邦題『ブランドなんか、いらない: 搾取で巨大化する大企業の非情 ) や 『ショック・ドクトリン: 惨事便乗型資本主義の正体を暴く 』などの著作で有名なジャーナリストで社会運動家であるナオミ・クラインが、フランシスコ教皇からの招へいを受け、ピーター・タークソン枢機卿(ガーナ)とともに 気候変動の問題についての会議を主導することになった。

2015年6月29日月曜日

アレクシス・ツィプラス首相(ギリシャ)の、7月5日に行われる債務問題に関する国民投票についての演説

ギリシャ市民のみなさん、
 この6ヶ月間、ギリシャ政府はかつてない経済的閉塞感の中で、1月25日(ギリシャ総選挙)で課せられた皆さんからの信任に応えるべく、奮闘してまいりました。
  私たちの交渉相手と、緊縮財政を終わらせるための話し合いを行うこと、そして私たちの国に今一度、繁栄と社会正義を取り戻すという、信任です。
 欧州のルールと同程度に私たちの民主制を尊重し、危機からの最終的な脱出を導くための持続的な合意のために、です。
 前回の総選挙ではギリシャ国民が、以前の政府が合意した政策覚書を明確に拒否したという事実にもかかわらず、交渉の間、私たちは繰り返し、その覚書の履行を求められました。
 私たちは、たとえちょっとの間でも、みなさんからの信頼を裏切って、その要求に屈しようと考えたことはありません。

5ヶ月の厳しい交渉の結果、私たちの交渉相手はユーログループ会議において、ギリシャの民主制とギリシャの人々に狙いを定めた最終提案を出してきました。
 この最終提案はヨーロッパを成り立たせている原理と価値に反するものです。私たちの共通のヨーロッパという企ての価値です。
 ギリシャ政府は、ギリシャの人々の肩に、新しい耐え難い苦難を負わせ、またギリシャの経済と社会の復興を覆し、不確実性を増すだけでなく、社会的不平等を悪化させるような提案を受け入れるように求められました。
 彼ら国際機関の提案は、ギリシャ島嶼部への税控除の廃止、食料、レストラン、観光業への付加価値税(消費税)の増税に加えて、労働市場のさらなる規制緩和、年金の減額、公的セクターの給与のさらなる減額といったことです。
 直接的にヨーロッパの社会的法制度と労働、平等と尊厳に関する基本的人権に抵触しているこれらの提案は、交渉相手やその国際機関の加盟各国は、すべての交渉参加者にとって達成可能で利益のある合意に到達しようとしているのではなく、単にギリシャの人々を侮蔑したいだけなのだ、ということを証明しています。
 これらの提案は、主に厳格で懲罰的な緊縮政策に対するIMFのこだわりを説明しています。
 各国政府が臨機応変に対応し、ヨーロッパの統合の将来を脅かすという形でヨーロッパの他の国々への影響を及ぼすであろうこのギリシャ債務危機を、最終的に解決するためのイニシアティヴを選択する時です。

ギリシャ市民のみなさん、私たちは今、ギリシャの人々のこれまでの戦いと犠牲を無駄にすることを許さず、民主制と我々の国の主権を強化するための、歴史的責任に直面しているのです。これは私たちの上に課された責任です。
 私たちの国の未来のための、私たちの責任なのです。
 この最終提案に対する応答として私たちが果たすべき責任は、ギリシャの民衆の主権意思に基づいています。
 今晩早く、内閣が招集され、私は、ギリシャの人々が決定することができるように、国民投票を提案しました。
 私の提案は満場一致で了承されました。
 明日、議会は、次の土曜日、7月5日に国民投票を実施するという内閣の提案を了承するための臨時議会を開催します。
 投票にかけられる設問は、国際機関からの提案が受け入れられるべきか否決されるべきか、です。
 私はすでに、フランス大統領、ドイツ首相および欧州中央銀行総裁に対して私の決定を伝えてあります。
 明日私は、我々の国の憲法とヨーロッパの伝統に規定されている通り、ギリシャの人々は圧力やゆすりから自由に、自分の意思を決めることができるように、欧州連合と国際機関のリーダーたちに、プログラムの短い延長を求める書面を送る予定です。

ギリシャ市民のみなさん、私たちは皆さんが、厳格で侮蔑的な緊縮経済を、それを終わらせることなしに、また社会的、金融的に私たち自身の二本の足で立つのだという見通しなしに、法外な最終提案を受け入れるべきかということについて、ギリシャの歴史が要求する尊厳と主権とともに、決断していただけるよう求めます。
 権威主義と厳格な緊縮経済に対して、私たちは静かに、断固として民主制で応えるべきです。
 民主制の発祥の地であるギリシャは、ヨーロッパと世界に対して、鳴り渡る民主制のメッセージを送るべきです。
 そして私個人として、それがどのようなものであっても、みなさんの民主的な選択の結果を尊重することを誓います。
 私は、みなさんの選択が私たちの国の歴史の名誉となるであろうこと、また尊厳を世界に届けることになるであろうことを固く信じています。
 この危機的な時に、私たち皆が、ヨーロッパこそが、ヨーロッパのすべての人々にとって共通の家であることを忘れてはなりません。
 そのヨーロッパには、ゲストもオーナーもいません。
 ギリシャは統合されたヨーロッパの一部であり、ヨーロッパは統合されたギリシャの一部であり、また今後もそうであるでしょう。
 しかし、民主制なきヨーロッパは、アイディンティティなき、コンパスなきヨーロッパになってしまうのです。
 私は国民的統合と平静をもってみなさんが行動し、価値ある決断をすることを呼びかけます。
 私たちのために、私たちの未来の世代のために、ギリシャの歴史のために。
 私たちの国の主権と尊厳のために。

Prime Minister Alexis Tsipras’ address concerning the referendum to be held on the 5th of July (June 27, 2015)
※日本語への翻訳は、ギリシャ政府提供の英語版から行いました。

2015年6月27日土曜日

同性婚は全米で合法、アメリカ高裁判決

 アメリカ合衆国最高裁は、同性婚を禁止する州法は違憲だという判決を下した。
 現在、アメリカでは同性婚を認める州と禁止する州があり、認められた州で結婚しても、居住地を同性婚禁止州にすると無効になる、ということが起こっていた。
 今回の判決で、禁止する州の無効阻止は禁じられ、全米で同性婚が認められることになる。
 判決は5対4で可決され、中道派のアンソニー・ケネディ判事が「法の視点からの平等の尊厳のためである。憲法は彼らにその権利を認めている」と述べて賛成に回った。
 オバマ大統領は、「今日は平等に向かう我々の歩みにとって、偉大な一歩である」と歓迎の Tweet を公開している。
US Supreme Court rules gay marriage is legal nationwide

同性婚、全米で合法 最高裁「禁止の州法は違憲」

2015年6月26日金曜日

ポデモス、経済学者ロバート・ポーリンと再生可能エネルギー政策を発表


 スペインの反緊縮政党ポデモスはとアメリカの経済学者ロバート・ポーリン(マサチューセッツ大学アマースト校)はグリーン・エネルギー政策を発表する会見を、マドリードで開催した。
 ポーリンによれば、スペインは再生可能エネルギーとエネルギーの効率化向上に、20年間で184億ユーロを投資することによって、32万人ぶんの雇用を創出することができる。
 「このプログラム全体は経済的に自足的であり、また、石油輸入依存からも脱却できることを考えるべきだ」とポーリンは述べる(スペインはエネルギーの80パーセントを輸入に頼っている)。
 スペインは2008年に建築ブームが崩壊し、建築業界での失業が深刻だが、この部分の労働者を再生可能エネルギーへの投資で吸収できるという。

Spanish anti-austerity party and US economist launch green energy plan

英国、反緊縮デモに10万人の人々(6月20日)

6月20日に、英国の反緊縮民衆会議(THE PEOPLE'S ASSEMBLY AGAINST AUSTERITY)の主催するデモが同国各地で行われた。
 ガーディアン紙によれば、7万人から15万人が参加したと考えられている。
 反緊縮民衆会議は、2013年に結成された社会運動で、Unite、UNISONといった英国の主要な労働組合組織と、その他様々な個人と社会運動組織から構成されている。
 団体には、反戦や環境団体、ムスリム系の団体など、様々な社会運動が含まれるほか、共産党と緑の党も参加している。
 個人には、映画監督のケン・ローチ、反戦活動家でイスラエルに対する厳しい批判でも知られる労働党のジェレミー・コービン議員らが含まれる。

20日のデモには、プライマル・スクリームのボビー・ギリスピー、歌手のシャルロット・チャーチ、コメディアンのラッセル・ブランドなど、若者の支持を集める著名人も参加した。


Why Britain's Anti-Austerity Protests Must Go On

Anti-austerity protests: tens of thousands rally across UK

Primal Scream's Bobby Gillespie joins anti-austerity march against 'the venal swine'

2015年6月24日水曜日

世界銀行が出資する開発計画への批判と報復行為に関するレポート

 2015年2月から、インド、ウッタラカンド州に計画されている大規模ダムに関して、近隣の村人40から50人による抗議行動が続いている。
 ダムはテヘリ水資源開発会社(THDC)によるものである。
 抗議に参加している村人の大半は女性や子どもであり、ダムが彼らの社会や環境に影響を与えるとしている。
 抗議の大半は歌をうったったり、彼らの恐怖や希望を訴えるなど、合法的なものである。
 一方、開発会社の側の排除行動は過激なものであり、村人を「売春婦」と罵ったり、彼らのカーストを揶揄するなどしたという。
 このダムは世界銀行から6億4,800万ドルの融資を受けて進められている。
 世銀は少なくとも書面上では「傷付けない」ポリシーを掲げ、融資のインパクトから地域コミュニティを保護することを制約している。
 しかし、ヒューマンライツ・ウォッチのレポートによれば、世界銀行はプロジェクトに伴う人権侵害に目をつぶっており、未来のさらなる違反を防ぐための適切な措置も怠っているという。

 2013年から2015年にかけて、カンボジア、インド、ウガンダ、キルギスタンで行われた調査に基づくレポート、『あなた自身のリスク: 世界銀行グループの計画に対する批判への報復』は、世銀が彼らが融資している計画への批判に対する深刻な報復行為があったという申立てについて、なんら意味のある対応をしていないという現実を描き出している。

 著者のジェシカ・エヴァンズは、世銀監査委員会の通訳が、査察団が現地調査の結論を出したわずか一週間後に投獄されたケースなどを強調した。


Critics of World Bank-Funded Projects in the Line of Fire (2015/06/22)

"At Your Own Risk: Reprisals against Critics of World Bank Group Projects"

バスクで、反フラッキング・キャンプ

バスクで、7月13日から19日まで、世界各国で行われているシェールガス開発にともなうフラッキングに反対する Frackanpada というキャンプが行われる。

Frackanpada | 2015 UZTAILA/JULIO/JULY 13-19 GASTEIZ BASQUE COUNTRY

「白人特権」は本当にあるか?


 「白人特権」は本当にあるのだろうか? 白人のコメディアン、ジェシー・カーンワイラー氏が、真偽を確かめるために、問題になっている、パレードに割り込む、服を脱ぐ、抗鬱剤を売る、といった行為を警官の前でやってみることに挑戦する。


Girl Tries to Get Arrested to Find Out if ‘White Privilege’ is Real | GOOD

緊迫するギリシャ情勢に、欧州各地で連帯の集会


 ギリシャの債務問題に関する議論が決裂の危機を迎えていると報じられるなか、欧州各地でSyriza政権への支援を表明するデモや集会が開催されている。
 アムステルダムでは、ギリシャ国会議員で、第二次世界大戦のレジスタンスでもあったマノリス・グレゾス議員が「この危機は金融セクターによって作り出されたものだ」と支援を訴えた。


Across Europe, protesters call for solidarity with Greece

Pro-Greek demos in Brussels, Amsterdam before crunch summit

2015年6月23日火曜日

ムスリムの子ども達に脱過激化のための教育を必修に、とイスラム法学者が述べる

BBCラジオの番組で、パキスタン人イスラム法学者であるムハンマド・タヒール・アリ・カドリ博士は、イギリスはムスリムの子ども達に脱過激化のための教育を必修にすべきだ、と述べた。
 スーフィ主義の有名な学者であるカダリはイスラム国(ISIL)の脅威に対抗して、「愛、寛容、共生と連帯に基盤をおいた」コーラン教育を実施し、イスラム教徒の子どもには必修にすべき(また非イスラムの子ども達も選択的に履修できるようにすべき)と述べた。
 カダリはこれまでも、イスラム過激主義を批判してきており、2010年にはテロリズムを批判する600ページのファトアを発表している。
 カダリのコメントは、デヴィッド・キャメロン英国首相が、700人のイギリス人がムスリム国のために出国したと見られることを受け、英国内のムスリム・コミュニティに過激主義に対する「暗黙の容認」があるのではないか、と述べたことへの応答である。

‘De-radicalization classes should be compulsory for Muslim children’ – Islamic scholar(2015/06/22)

カナダのマニトバ州は、同国で初めて、先住民の子どもに対する大規模な非先住民家庭への養子化政策に対する謝罪を表明

カナダのマニトバ州は、同国で初めて、先住民の子どもに対する大規模な非先住民家庭への養子化政策に対する謝罪を表明した。
 同州知事グレッグ・セリンガー氏は18日、「60年代スコップ」として知られる政策への遺憾の意を表明した。
 「私はマニトバ州知事として"60年代スコップ"について、謝罪したいと思います。」と述べ、子ども達から文化とアイディンティティを奪った歴史の暗い一幕について、州の教育カリキュラムに加えるとした。
 州の児童福祉担当者は、数千人の先住民の子ども達を彼らの家庭から連れ出し、カナダとアメリカの非先住民家庭に養子として送り出した。

Manitoba formally apologizes for mass adoption of aboriginal children (2016/06/18)

2015年6月20日土曜日

IMF、ギリシャのジャーナリストを「訓練」

 IMFの、前ギリシャ代表のパナギオティス・ロウメリオティス氏は、IMFはギリシャのジャーナリストたちをワシントンに招き、IMFと欧州委員会の主張を報道するように「訓練」していたと証言した。
 ロウメリオティス氏は、個別のジャーナリストの名前を挙げることは拒否し、「多くのジャーナリストはIMFの誤情報キャンペーンの犠牲者である」と述べた。
 また、ジャーナリストだけではなく、何人かのエコノミストや大学教授も、債務が持続可能なものであるというIMFの主張は正しいということを説明するためのセミナーに参加していたと明らかにした。

IMF “trained” Greek journalists in Washington D.C. to spin stories in favor of IMF and European Commission

インド、オリッサ州でボーキサイト採掘反対運動と当局の対立が続く

5月28日、インド、オリッサ州でボーキサイト採掘に反対している地域の部族の活動家バガバン・マジー氏が武器所持など、記事によれば虚偽の容疑で逮捕され、現在も拘留中である。
 これは独立のケースではなく、2000年には3人の先住民活動家が警察によって射殺されるなど、鉱山開発をめぐる地域住民や先住民と当局の対立が続いている。

http://www.aneyezine.com/anti-bauxite-mining-activist-bhagaban-majhi-arrested-for-voicing-dissent/

ブラジル ベロ・モンテ・ダムは二千家族以上の生活を危険にさらしている


16日付のガーディアン誌の報道では、ブラジル、パラ州に建設予定のベロ・モンテ・ダムは中国の三峡ダムおよびブラジルとパラグアイ国境にあるイタイプダムに続く、世界第3位の大きさのダムになる予定である。
 このダムの建設が、地域の先住民など、少なくとも2000家族以上の生活を危険にさらしている、とブラジルの連邦検察官は警告を発している。
 調査を担当した連邦検察官事務所が発表した声明によれば、工事を担当しているノルテ・エネルギア・コンソーシアムは地域の先住民グループや農民、漁師との55項目の合意事項に違反しているという。

コンソーシアムも連邦政府も公的なコメントを発表していない。

Brazil's Belo Monte dam puts livelihood of 2,000 families at risk, prosecutors say

2015年6月18日木曜日

ギリシャ債務の真実委員会によるレポート

 ギリシャ債務の真実委員会による最初のレポートのエグゼクティヴ・サマリーが公開されている。
 レポートはギリシャ債務の増大の原因が、主にEU各国の民間銀行救済の目的で、また不正な形で、ギリシャの一般市民への影響を考慮せずに行われたものであるとして、ギリシャ政府が債務の返済を停止ないし拒否する合法性、正統性があると結論づけている。

 Executive Summary: Greek Public Debt Audit report


ラファエル・コレア、新税法2案の「一時的撤回」に追い込まれる

 報道によると、エクアドルのラファエル・コレア大統領は、大規模な反対運動に発展している税制2法案について、採決を先延ばし、国民に対して議論を呼びかけた。
 この税制法案は、キャピタルゲインへの課税と、相続税の強化に関するものである。
 現在、エクアドルの相続税は上限35パーセントの課税となっているが、これを47.5パーセントに引き上げ、課税対象も拡大する。
 コレアは、反対派が議論に応じず、単に法を廃案にしようとしているだけだと非難した上で「我々は待つことができる。これは政府のための法律ではなく、未来世代のためのものだ」と述べた。
 延期の理由の一つとして、来月6日よりローマ法王フランシスコが同国を訪れる予定になっており、政権としては混乱を回避したいものと推測されている。
Source:
Correa Delays Tax Vote, Calls for National Debate on Wealth Redistribution in Ecuador

Ecuador’s Correa Withdraws Controversial Tax Bills After Days Of Protests

2015年6月17日水曜日

Nyéléni: 食料主権と栄養摂取





Nyéléni ニューズレターの22号が発行されています。

Nyéléni は西アフリカのマリにある町の名前で、2007年に世界各国から小規模農家のネットワークがそこに参集し、食料主権と小規模農業の権利を訴える会合を開きました。
 これは、Nyéléni宣言としてまとめられ、またその後も定期的に政策レポートやニューズレターが発行されています。
 今回発行された22号は、食料主権と適切な栄養摂取の権利の関係をあつかっています。
 パレスチナの事例など、興味深い話が掲載されていますので、その囲み記事の部分を抄訳し、ご紹介します(逐語訳ではないことにご注意くださいご注意ください)。

2015年6月16日火曜日

ニカラグア運河反対デモに一万人

ニカラグアのオルテガ政権が中国系の企業との事業として進めている、太平洋と大西洋をつなぐ「ニカラグア運河」計画への反対運動として、同国チョンタレス県フイガルパで参加者一万人を超えるデモが行われた。
 参加者たちは、特に地域にとって重要な水資源を提供しているニカラグア湖が、運河とつながることによって塩化、沈殿物の堆積、水位の下降といった環境問題が引き起こされることを憂慮している。

link: Over 10,000 Nicaraguans Protest Chinese Canal Project
 (写真も)
ニカラグア運河は、ニカラグア湖を通過する形で建設される。地図は Wikipedia より。
NicaraguaCanal.5.jpg
"NicaraguaCanal.5" by Ekem - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 4.0 via ウィキメディア・コモンズ.

メキシコも同性婚合法化へ


 2015年6月15日付の記事でテレスールが伝えるところでは、メキシコ最高裁は同性婚が認められないのは差別に該当すると決定した。
法制化はまだだが、この決定により、ビクター・マヌエル・アギーレさん(43歳)とビクター・フェルナンド・ウリアスさん(38歳)は、同国初の同性婚制度による婚姻カップルとなった。

link: Mexico Passes Same-Sex Marriage

Wikileaks 、TPP交渉資料をリーク: ニュージーランドの処方箋制度を標的か【 修正、追記あり】

Wikileaks は、TPP(環太平洋経済協力協定)交渉に関する内部資料とされるものを発表した。
TPP Transparency Chapter(on June 10, 2015)
  ※画像も同サイトから
TPP交渉は交渉に参加する各国の議会にすらも内容は秘匿されて行われており、そのことに対する批判はアメリカ内部ですらも大きい。
 Wikileaks はこれまで、このTPP交渉における内部資料をリークしてきており、常緑化(エバーグリーニング)等、知的所有権に関して多国籍製薬企業を有利にすると考えられる条項の存在が明らかになってきている。
 今回リークされた資料は、WIkileaks が同時に発表した専門家の分析レポートによると、ニュージーランドのPharmac(New Zealand’s Pharmaceutical Management Agency / ニュージーランド医薬品管理庁)を標的にしたものだと考えられる。


 Wikileaks のサイトで懸念を表明しているのはラトローブ大学(オーストラリア)のデボラ・グリーソン博士(グリーソン氏資料:PDF)と、オークランド大学(ニュージーランド)のジェーン・ケルシー教授(ケルシー氏資料:PDF)である。
発表された資料はTPP協定の「透明性」に関する付属書の一部であるとされ、2014年12月17日の日付がある。
 文書は、参加国の「国営のヘルスケア・プログラム」に対して、どのような薬品や治療機器に対して保険を認めるかの決定について、高いレベルの「透明性」を求めるものとなっている。
 「透明性」といえば聞こえはいいが、これは、どの医薬品や医療機器が対象であると認められるかの決定プロセスに対して、多国籍企業が介入する仕組みを作るように求めるものである。
 文書は、対象になるリストの決定に際して、十分な公示期間、「公式でよく定義された」提案を審議しなければいけない義務、またそれに関わる訴訟手続を明示するように求めている。
ケルシー氏によれば、文書が「公的なヘルスケア機関によって運営されているヘルスケア・プログラム(‘national health care program’ run by a ‘national health care authority’)」に狙いを定めているのは、主にニュージーランドを対象にするためである。
 たとえばアメリカ政府が運営するメディケアはすでに同様の規制を別のFTAで受けており、またここでも、多くの保険(たとえば州政府や国防総省が運営している)はこの条項の対象から除外されることが念頭にある。
 なぜニュージーランドの Pharmac がTPPのターゲットになるかといえば、これは極めて効率のよいヘルスケア制度として、多くの国が手本にしているからである。2013年に発表されたオーストラリアに関するレポートによれば、もしオーストラリアが同様のシステムを採用すれば、同国は16億オーストラリア・ドルを節約できる見込みである、と論じられている。
 現在、第三世界の多くの国がニュージーランドをモデルに制度の整備に関する議論を行っており、ここに楔を打ち込むことは、製薬企業にとって重要である、とケルシー氏は分析している。

 ※以下のご指摘をいただきましたので、当該部分の表現を修正しました。ご了承ください(2015/06/16)。

2015年6月12日金曜日

スペイン:「広場占拠運動」の活動家がバルセロナ市長に

※先に行われたスペイン統一地方選の情報を、許可を得て転載します。

5月24日にスペインで一斉地方選挙が実施され、左派政党「ポデモス」と、ポデモスの支持を受けた地域政党が躍進した。
 二大政党の人民党と社会党は得票率をそれぞれ、前回(11年)の37%、27%から27%、25%へと減らした。初めて一斉地方選挙に参加したポデモスは(単独ではなく他の左派政党との連合で)、約14%を得た。

前回の地方選挙では、経済不振と社会党への不満の高まりの中で人民党が圧勝した。今回の選挙で人民党のラホイ首相は経済回復の予想を強調し、未知数の左派政党に経済運営を任せることはできないと訴えた。しかし、人民党は議席数を大幅に減らし、多くの州や都市でポデモスや市民党が議会においてキャスティングボートを握ることとなった。

カタロニア州の州都バルセロナ(人口160万人)では、11年の広場占拠運動や住宅占拠運動の活動家のアダ・コラウさん(41歳)が市長に選出された。コラウさんは地域政党「バルセロナ・エン・コム(みんなのバルセロナ)」の代表で、住宅強制退去をやめる、公営住宅を増やす、富を再分配する等の公約を掲げた。
 首都マドリードでは人民党が第一党を維持したが、僅差で第二党となった「アオラ・マドリード(今日のマドリード)」のマヌエラ・カルメナさん(71歳)が6月の市議会で市長に選出される可能性がある。同党も広場占拠運動の活動家によって結成された地域政党でポデモスの支持を受けている。

第三の都市バレンシアでも左派政党の連合が成立すれば左派の市長が誕生する。
 英国「ガーディアン」紙は次のように報じている。
 「マドリードとバルセロナでの左派連合の躍進が示唆(しさ)することは、今後スペインの二大都市における政策課題がスペインの『怒れる者たち』の運動をルーツとする反既成勢力の政党の優先課題によってけん引されるということである。
 年末に実施される総選挙を前に、今回の選挙は有権者たちのムードをテストするチャンスだった。示されたメッセージは明確だった。スペインの人々は、フランコ独裁体制の終焉(えん)以降のスペインの政治を特徴づけてきた二大政党による支配を終わらせることを支持した」 (同紙5月25日付)。

米国の公共ラジオ放送NPRによると、「この数日、スペインでもっとも頻繁(ひんぱん)にツイッターで転送されている画像は、13年6月に警官隊がアダ・コラウさんを逮捕している写真である。コラウさんをはじめとする反貧困デモの参加者が、住宅からの退去強制に反対してバルセロナの銀行を占拠しようとしていた時の写真で、『歓迎、新市長』というメッセージが添えられていた」 (同25日付)。

コラウさんは住宅強制退去に反対する直接行動で数十回警察に拘束されている。2年前には国会の公聴会で住宅強制退去の問題について証言し、同席した金融産業の代表を激しく非難し、議会による懲罰を受けた。この証言によって彼女は緊縮政策と失業に苦しむ多くの人々の共感を得た。彼女は広場占拠運動に先立つ09年から、住宅強制退去に直面している人たちを支援するグループ、PAHを結成して活動を始めてきた。

今回の市長選挙に向けて、「バルセロナ・エン・コム」のほか、「ポデモス」、「カタロニア緑の党のためのイニシアチブ」、「統一オルタナティブ左翼」などの政治グループや市民団体が力を合わせた。
 同24日夜、コラウさんは選挙本部前で支持者たちを前に、「ダビデがゴリアテに勝ったのだ」と語った。また、オーストラリアの「リンクス」誌のインタビューに答えて、「……選挙運動はこのような『民主主義革命』の流れの中で形成された。私たちは誇るべきである。他の国だったら反応は全く違っていただろう。しかし市の政治は歴史的に、下から上へ、人々に近い所から破裂が起こる場所なのだ」と述べている。

“翻訳:喜多幡佳秀、「労働情報」誌6月15日号より”

2015年6月8日月曜日

ファイナンシャル・タイムスにスティグリッツら著名な経済学者らのギリシャ債務問題に関する声明

2015年6月5日付のファイナンシャル・タイムスに、「最後の瞬間に、経済的平静と人道を求める請願」"In the final hour, a plea for economic sanity and humanity"と題され、世界の著名な経済学者など26名が署名している声明が発表された。
 この声明は、ギリシャのSyriza政権と、債務問題をめぐって対立を続けるEU指導者に対話と譲歩を求めるもので、ノーベル賞経済学者ジョゼフ・スティグリッツ、拡大する格差についての著作『21世紀の資本』が世界的な大ベストセラーになったトマ・スティグリッツ、元イタリア首相マッシモ・ダレマ(共産党→オリーヴの木)らが署名している。
 経済学者らは、声明の中で、緊縮財政と「改革」を区別する必要があると述べ、緊縮財政が人々の生活に厳しい影響を与えることを警告し、EUがSyriza政権に対して求めている、厳しい緊縮政策を含む財政再建案を再考することを求めている。
オルタグローバリゼーション運動という観点からは、ATTACフランスの学術委員会メンバーでもあるドミニク・プリオン(パリ大学)が参加しているのが注目される。

トルコ総選挙、与党AKP(公正発展党)が議席を減らし、左派HDP(人民民主主義党)が躍進: エルドアン政権に打撃

6月7日に投開票が行われたトルコ総選挙(定数550)は、エルドアン大統領の与党AKP(公正発展党)が憲法改正発議が可能になる330議席を確保するかが焦点になっていたが、大幅に議席を減らして258議席にとどまった。エルドアン政権が目標としていた大統領権限の強化に、国民がノーを突きつけた形である。
 一方、野党は議席を伸ばしたが、中でも50議席増の議席増の79議席を獲得したHDP(人民民主主義党)が注目される。HDPは、クルド人系の人々を支持基盤にした左派政党である。
HDPはクルド系住民に支持基盤を持つとはいえ、女性やLGBPの権利にも力を入れており、その基本政策には最低賃金政策や若者の失業問題、水道と電気の基本料無料パッケージ、教育と医療アクセスの無償化、そして平和運動(アルメニアとの交易停止措置の解消などを含む)が並んでいる。EU加盟については追求するとしているが、(Syriza同様)そのネオリベラルな政策には懐疑的である。信教の自由の追求と、国民のイスラム信仰を監視する政府機関の廃止も約束している。
クルド問題については民族アイディンティティの権利を認めることや、クルド人地区の自治権を認めることなどが目標となっている。(政策については"Turkey gets a taste for European-style radicalism ahead of election" を参照した)。
多様性に寛容な政策が、本来の支持基盤であるクルド人や左派のみならず、オキュパイ・ゲジ(2013年に起こったタクスィム・ゲジ公園再開発などに抗議して発生した若者たちの反政府運動)に参加したような若者たちの支持を、HDPに向かわせたようである

2015年6月4日木曜日

中国のAIIB(アジアインフラ投資銀行)がなぜ世界に受け入れられたか?

日本でもAIIBに加盟するか否かを巡って大きな議論が起こった。結果的にはBRICS諸国やアジアの主要国のみならず、アメリカと日本を除く西側諸国も多く参加しての発足となった。
  先進国の開発政策を激しく批難してきた左派シンクタンクであるフォーカス・オン・グローバル・サウスの国際政治学者で、前フィリピン国会議員でもあるウォールデン・ベローの議論を紹介する。
 ベローは、世界銀行とIMFが先進国の利益と古典的な緊縮政策を支持する経済学者に支配されており、第三世界諸国が求めている改革がまったく実施されてこなかった、というところに本来の原因を求めている。
 世界銀行はアメリカのための機関と考えられており、日本が支配するアジア開発銀行も、アジア諸国から見ると実質的にアメリカの政策に従属的である、とみなされている、とう指摘である。
 両機関においてクォータの調整などの改革は行われているが、これらは中国を筆頭とする第三世界諸国を満足させるものではなかった、というわけである。
 ここでは触れられていないが、故ウゴ・チャベス前ベネズエラ大統領らが主導した「南の銀行」(Banco del sur)も同様の問題意識のもと、設置された。
  AIIBが開発を進める際に、環境や貧困、人権の問題をどう扱うかは現在のところ未知であるが、AIIBへの参加とは別に、民主制や透明性において、世銀、IMF、および日本が主導権を握るアジア開発銀行の改革をどう進めていけるか、ということが問われているのである。