2015年7月30日木曜日

大英帝国はインドなどの旧植民地に賠償金を支払うべきか

[Resouce]
Viewpoint: Britain must pay reparations to India

5月末、世界で最も伝統あるディベート・サークルであるオックスフォード・ユニオンは、「英国はその元植民地に賠償金を支払うべきか」をテーマにした討論をおこなった。講演者は、元保守党議員のリチャード・オッタウェイ卿、インドの政治家で作家であるシャシ・タロール、英国の歴史家ジョン・マッケンジーなどである。シャシ・タロールの議論は討議の後 Twitter で拡散され、広い指示を得た。その論点は以下のようなものである。


経済

18世紀初頭、インドのGDPは世界の23パーセントを占めていたと推計されており、これはヨーロッパのそれとほぼ同じ規模である。しかし、インドが独立した時点で、GDPのシェアは4パーセントまで低下していた。理由は単純で、インドは英国の利益のために統治されていたからである。19世紀の終わりの時点で、インドは英国最大の輸出先であり、また英国人の植民地官僚は高給取りであったが、インド人はこれも支払っていたわけである。


インドの脱産業化

 英国の産業革命はインドの脱産業化の上に成たっている。インドの織物産業はイギリスによって破壊され、イギリス産の安い織物が市場を埋めた。インドは原料を輸出し、高価な最終製品を輸入する国に改造された。
 ベンガルの手織物、特に安いが品質の良いモスリンは世界各地に輸出されていた。
 イギリスは、これらの手織物職人の親指を切り落とし、機織り機を破壊し、関税をかけることで、自国の蒸気機関で生み出された織物を世界にあふれさせた。
 産業の中心地だったダッカの人口は90%低下し、職人たちは物乞いをせざるを得なくなった。インドの世界マーケットにおけるシェアは27パーセントから2パーセントに落ち込んだ。


「インドのクライヴ」

 ロバート・クライヴのような植民地主義者は、インドで獲得した資金を使って腐敗選挙区(住民がほとんどいなくなったものの庶民院の議席が維持されている小選挙区。議席を買収することが容易だった)からの議席を獲得した。
 英国の人々は、厚かましくも、彼らがイんドに属しているかのように「インドのクライヴ」などと呼んだ。実態は、彼らがインドを、自らに属しているかのように扱ったのである。


ベンガル飢饉

 英国の容赦ない搾取によって、1500から2900万人が飢饉によって亡くなったと考えられている。
 こういった大規模な飢饉が最後に発生したのは、英国統治時代である。1943年に、四百万人がなくなったベンガル飢饉は、ウィンストン・チャーチルがインドから英国の兵士とヨーロッパのために食料を転送させた後に発生した。
 チャーチルは「ベンガルの飢饉はギリシャのそれより深刻ではない」と論じた。
 ある良心的な官僚が電信でチャーチルに、彼の方針が悲劇的な状況をもたらしていると知らせた時には、彼は苛立って「では何故まだガンジーは餓死してないのかね?」と答えただけだったという。


「啓蒙的な独裁」という神話

 英国の帝国主義は、「啓蒙的な独裁」であったという正当化がなされてきた。しかし、1943年のチャーチルの非人道的な行為は、それが嘘であったことを明らかにした。
 しかし、実際はその嘘は2世紀前から明らかであった。大英帝国は大きなスケールでの征服と欺瞞によってだけではなく、大砲によって反乱軍を粉砕することや、ジャリヤーンワーラー・バーグに集まった非武装の民衆を虐殺すること(日本では一般にアムリットサル事件として知られる虐殺事件)、制度化された人種差別による不平等の維持などによったのである。
 植民地時代に英国市民であると感じていたインド人はいなかった。彼らは常に、市民ではなく臣下であったのである。


インド鉄道

 インド鉄道網の建設はしばしば、英国統治からくる利益であったと言われる。これは、多くの国が植民地化されずに鉄道を建設しているという自明の事実を無視している。
 インドの公衆のための作られた鉄道は存在しなかった。それらは、イギリス人の交通の便のために作られたのであり、それ以上に、インドの天然資源をイギリスに輸出する港に運ぶために作られた。植民政策の利益にならない人々の移動というのは、鉄道の目的としては二次的なものであった。人々の大規模な移動という需要に応えるために鉄道の供給が調整されたことはない。
 事実として、インド鉄道は英国植民地の詐欺である。英国の投資家たちは馬鹿げた金額を鉄道事業に投資したが、これは政府が過剰な配当を約束したせいであり、この配当はインド人が支払った税金で賄われた。
 英国人の強欲のおかげを持って、インド鉄道建設費用は、カナダやオーストラリアの建設費用と、一マイルあたりで比較して倍である。これは、壮麗な詐欺であった。イギリス人が全ての利益を得、技術を管理し、全ての設備を供給するのであり、したがって利益はすべてインドの外に出て行ってしまう仕組みである。これは当時から「公共がリスクを負う、私企業の企て」と表現されるスキームであった。つまり、イギリスの私企業の利益と、インドの公衆のリスク、である。


英国の援助

 植民地制度に対する賠償の要求が大きくなってきた近年ですらも、イギリスの政治家たちはインドのような国々が英国の納税者の負担で、基本的な経済援助を受け取るべきなのかどうかについて論じている。
 第一に、開発援助として受け取っているのはインドのGDPの0.4パーセント、1パーセントのさらに半分以下、にすぎない。
 英国の援助は、賠償に関する議論が提起すべき金額にはるかに及ばず、インドが農家に払っている肥料の補助金の一部でしかない。このことはこの議論の適切なメタファーになるだろう。
 イギリスの人々は我々がクリケット、英語、議会政治といったものを愛好すること、シムラを舞台にした『インドの夏』のようなテレビシリーズの中の、ラジ(英国統治時代の)まやかしの思い出、ガーデン・パーティ、異教徒のインド人、といったものを見るのが大好きだ。
 しかし、多くのインド人にとって、略奪、虐殺、流血の歴史であり、最後のムガール皇帝が牛車でビルマに追放された歴史なのである。


世界大戦のインド兵

 インドは第一次世界大戦に、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドと南アフリカからの兵士を足したよりも多く、英国兵として兵士を参加させた。
 不況、貧困、そしてインフルエンザの蔓延にもかかわらず、インドは今日のお金にして80億ポンド(120億ドル)の資金を拠出した。
 第二次世界大戦でも、250万人のインド人が英国軍として参戦した。終戦時には英国の30億ポンドの債務のうち12.5億ドルをインドが引き受けたが、これは植民地時代の搾取から見れば氷山の一角というべきものである。これらは返済されていない。


コ・イ・ヌール・ダイヤモンドの返還


 重要なのは、英国が支払うべき賠償金の金額ではなく、贖罪の原則である。
 200年の不正義は、いかなる金額でも補償できるものではない。
 私は、個人的には、例えば今後200年にわたって、毎年象徴的な1ポンドが謝罪の印として支払われるということで十分満足である。
 そしておそらく、英国はコ・イ・ヌール・ダイヤモンド(訳注:ムガール皇帝が代々継承してきたダイヤモンドで、インド皇帝としてのヴィクトリア女王が継承し、現在は英国王室が所有している)が返還されるべきであろう。

2015年7月25日土曜日

アメリカ、遺伝子組替え食品の表示義務を禁止する法案が下院を通過


 「アメリカ、遺伝子組替え食品の表示義務を禁止する法案が下院委員会を通過」でお伝えしたお伝えした、遺伝子組替え食品の表示義務を自治体が独自に課すことを禁止する法案が米下院を通過した。議論は上院に移る。


[Resouce]
 House approves voluntary GMO labeling bill, H.R. 1599
 

Eurodad: アディス・アベバ・サミットは開発のための資金問題を議論するに十分ではなかった。

すでに何度か紹介した「国連開発資金国際会議」であるが、債務の問題に取り組んでいる欧州の市民社会組織であるユーロダッド(Eurodad)によるまとまった論考が発表されたので、訳出する。
 ちなみに、Facebook では、「アメリカ、イギリス、日本の主導により富裕国が、政府間課税機関について議論することを拒否することによって、FfD合意全体を脅かしている」と批判していたが、本文ではアメリカ、イギリスに加えて(日本に変わって)フランスの名前が挙げられている。要するに、G7に参加している主要国が、改革の阻害要因とみられているということであろう。

開発資金に関するアディス・アベバ・サミットは今日のグローバル金融システムの不公正と欠点いついての議論を再び活性化させるプラットフォームになった。しかし、サミットは解決策を提示するには不十分であり、唯一の決定的な前進は、毎年定期会合を開催していくという決定だけである。このサミットは、大団円というよりは、開発資金に関する長い道のりの最初の一歩になった、というべきである。アディス・アベバまでの道のりのなかで市民社会と第三世界諸国が主導してきた変革推進の強い力は、今後も継続され、成長させられなければならない。

アディス・アベバに集まった市民社会組織(CSOs)は会議場の廊下に「ニューヨークで会いましょう」という巨大なバナーを掲示することで、会議の残念な成果への失望を表明し、諸国の政府に、このキャンペーンが、開発目標に貢献しうる変革を達成できるようシステムを変革するまで続けるべきであることを示した。今回掲げられた問題の多く、特に、税、民間金融、開発援助、債務の問題に関係することが、CSOsのアジェンダの域に留まっている。アディス・アベバで構築されたCSOsの間でのグローバルな共同作業と、アディス・アベバの欠点に対する公的な認識と批判が知れ渡ったことが、おそらく最も重要な会議の成果でしょう。


国際的な脱税行為を止める国際機関

毎年数兆ドルがグローバルな税システムの欠陥によって失われているという事実を受けて、開発途上国はグローバルな税基準に関する決定を行う会議のテーブルにつくことを求めて、アディス・アベバに集まってきた。彼らは国際的な脱税と不正な資金の流れを防ぐための新しい国連機関の設置を求めている。それは、金持ち国クラブと揶揄されるOECDから、この問題に関するグローバルな決定の権限を受け継ぐものになる。OECDが決定権を持っている限り、100カ国以上の発展途上国は、政策決定プロセスから排除されていることになるのである。

 「グローバルな税機関」に関する議論は、非常に白熱したものになり、アジェンダ上で最も際立った議題になった。しかし、イギリス、フランス、アメリカ合衆国などにリードされた先進諸国は、税機関に対する全ての言及を削除させ、OECDだけがグローバルな税基準に対する議論を行う唯一の国際機関であるという現状を維持している。これは、彼らを歓迎しない閉じられた部屋で決定され続けるグローバルな税基準を受け入れさせられる発展途上国にとってだけの悲劇ではない。これは実際のところ、すべての人にとっての悲劇である。なぜなら、50年以上にわたってOECDが決定権を支配してきたが、その結果が示すように、半数以上の国々が政策決定から排除された状態でつくられたグローバルな税システムが実効的なものにはなりえないからである。世界の政府がグローバルに共同し、壊れた税システムの修正に取り掛かるまでは、多国籍企業は産業界規模で脱税を継続するだろう。幸運なことに、変革を求めるグローバルな圧力は、これらの問題をアジェンダから外しておくことが不可能なまでに高まっている。グローバルな税機関を求める18万人以上の署名が Avaaz の請願サイトをつかって集められ、130以上の発展途上国を含むG77諸国は、彼らがこの問題に対する要求をし続けることを強調して会議を終えた。したがって、人々の視線は、キャンペーンの次の目標として自然に、2016年の継続会議に向けられている。


 民間金融の規制なき受け入れ

 民間金融の開発のための関与という問題に関してもまた、アディス・アベバの成果は幾つかの重要な挑戦に関する議論を十分行えていない。民間金融はすでに多くの開発プロジェクトで中心的な役割を持たされて受け入れられており、それらが十分な成果を上げた記録はまだなく、また企業が人権に適合することを保証する基準も非強制的なものにとどまっているにもかかわらず、発展途上国に対する民間資金の流れをレヴァレッジ(テコ入れ)するメカニズムは推奨されている。海外民間投資のフローに対する過剰な信用は、それらのフローが有意なリスクを伴うことから、公衆の利益を最大化するように慎重に管理されなければならない。リスクを扱うことの重要性は、Eurodad第三世界諸国の政府、研究者によって指摘されてきた。特に、公式の会議と並行して行われたラウンドテーブルでのジョゼフ・スティグリッツの指摘は一見の価値がある。

会議の成果は、強力な妨害措置のおかげで、官民パートナーシップ(PPPs)に関係して生じる様々な問題も扱うことに失敗している。これらは、Eurodad が最近出版した『どんな嘘が隠れているのか?』で強調している問題である。その他の問題の中で、これらのパートナーシップは、リスクを発展途上国側に残す一方で、企業パートナー側に「獅子の分け前」(一番いい部分)を明け渡すはめになることが多い。その結果、金融上の問題を引き起こし、発展途上国の債務レベルを悪化させることになる。PPPsの真のコストを明白にし、PPPsにおける説明責任と透明性を向上させるために、まだまだなされなければならないことが多数ある。今後の議論の一環として、国連は、PPPsの利用に際しての、包括的で開発に集中するための原則と基準を発展させていくために、包摂的で、公開され、透明性の高い議論の場を招集するという役割を果たすべきである。


債務危機に関する具体的な解決策はなかった

会議の公式の成果が解決策を提供できなかったもう一つの、分野は債務問題に関するものである。いくつかの国はすでに債務危機状態にあり、それ以外にも多くの国が重い債務に苦しんでいるにもかかわらず、いかなる具体的な債務救済イニシアティヴも合意には至らず、合意文書には主権者債務の構造改革という原則についての曖昧な言及のみが含まれている。したがって、未来の債務危機を防止し、管理するためにどうしても必要であり、現在失われている多国間債務の構造改革枠組みの発展はほとんど見られなかった。

皮肉なことに、サミットの間ニュースを独占していたギリシャ危機の深刻化は、開発にとって解決できない債務危機がいかに有害なものかを示す明確な警告になった。しかし、アディス・アベバが解決策を提供することに失敗したおかげで、この仕事は現在、ニューヨークで7月後半に開かれる国連総会とそれに付属する債務再建委員会の手に委ねられることになった。


 開発援助のレベルの低下

 政府開発援助(ODA)に関する議論はアディス・アベバ・サミットではあまり時間が取られなかったにもかかわらず、現在の発展は会議に喜ばしい背景を提供しているとは言い難い。後発開発途上国は国民総所得(GNI)の0.7パーセントをODAに費やし、特に0.15パーセントから0.20パーセントを後発開発途上国へのODAに費やすという費やすという、古い約束の達成を確定するタイムテーブルを求めている。アフリカ諸国は、従来の約束を2018年までに達成し、2020年までに新しい目標としてGNIの1パーセントという目標を設定するように求めている。さらに彼らは総予算の50パーセントが後発開発途上国に向けられるべきだと呼びかけている。

不幸なことに、この問題に関する合同声明の作成に際して、欧州連合(EU)はこれらの提案に合意しなかった。この声明では、ODAに関する約束はポスト2015アジェンダのタイムラインの中で実行されるべきだと述べている。これはおそらく、持続的開発目標(SDGs)のデッドラインである2030年までに、という意味であり、市民社会はデッドラインまでに十分な資金提供がなされないリスクを強調している。その間、フィンランド政府はODAの43パーセント削減を発表し、デンマーク政府も現在のGNI比0.85パーセントから、0.7パーセントまで、およそ15パーセント程度のODA予算削減を発表した。

ODAは依然として後発開発途上国にとって非常に重要な役割を果たしているにもかかわらず、アディス・アベバ・サミットは、すべての発展途上国がより信頼できる財源からの追加の資金を動員できるようにする努力にすべての力を傾注しなければならなくなっている状態を明示的に示した。これは、グローバル金融システムのリフォームが強く求められていること、国際的な脱税、民間金融に付随するリスクおよび債務危機に取り組む真の解決策が呼びかけられていることの主要な理由である。これらは、アディス・アベバ・サミットの終了後も長く継続していかなければいけない。


[Resouce]
 Addis Ababa summit falls short of addressing financing for development
 

2015年7月20日月曜日

アメリカ軍退役中将、ドローンによる作戦が失敗であったと指摘

 アメリカ国防情報局長も務め、イラクとアフガニスタンにおける戦争に深く関わって、2014年に軍を退役したマイク・フリン元中将はアル・ジャジーラのインタビューに答え、「ドローンが、テロリストを殺す以上に、テロリスをを作り上げている」と米軍の戦略を批判している。

 イスラム国(ISIL)のシリアにおける勃興に対して、米軍のイラク侵攻が果たした役割について「私たちはまちがいなく火に油を注ぎました。疑いなく、歴史は2003年に行われた決断を労らないでしょう。イラクに行くことはまちがいなく、戦略的なまちがいでした」とフリンは述べている。


[Resouce]
DRONES CAUSE MORE DAMAGE THAN GOOD’ Al Jazeera...

Retired General: Drones Create More Terrorists Than They Kill, Iraq War Helped Create ISIS

【オピニオン】露骨な「貧困削減」の民営化は人権をリスクに晒す

ロンドン(2015/07/16)
企業のロビイストは、開発に関する会議では珍しいゲストである。しかし、今週、国連が、誰が新しい持続的開発目標(SDGs)のための支払いをするか決めるためにアディス・アベバで開催した第3回開発資金国際会議では、幾つかの国の政府は企業セクターの参加を歓迎した。

 不幸なことに、開発に参入する企業の役割が透明で説明可能な状態を保てるようにするためのいかなるメカニズムについても合意に至らなかった。


 ある種の人々は、開発問題において企業に大きな役割を割り振ることは、単純にウィン・ウィンの結果をもたらすと考えている。政府は、気候変動と貧困の問題に責任を持ち、ポスト2015アジェンダで求められる、住宅、健康、教育やインフラに関する目標を満たすために必要な2兆5千億ドルにのぼると見られる援助予算を支出するという圧力から解放されるための融資を利用可能になる。

 一方で、企業は政策立案に対して物を言い、旨味のある公的契約を獲得する潜在的な機会を得られる。

 しかし、政府がこれらの企業の肩に、貧困や気候変動、その他のグローバルな諸問題に取り組むという適切な責任を乗せるまでは、企業は、これは鶏小屋のなかに狐を放つようなものではないか、と疑う批判派を納得させなければならないだろう。

 企業を開発に関与させることが、生活を向上させるための重要な資金源を獲得するよい方法であるとしても、私たちの経験は同じように、企業が説明責任を負わないときは、人々やコミュニティが非常に深刻な害を被ることがある、ということを示している。

 水、教育、医療等の重要な公共サービスにおける民間企業の役割の向上は、リスクに満ちている。国連人権委員会は7月2日、適切な規制のない教育の民営化(私営化)が、無数の子どもたち、特に支払い能力のない世帯の子どもたちを質の高い教育から排除し、彼らの教育を受ける権利をリスクに晒している、と警告している。

 世界各地で、アムネスティ・インターナショナルも、多国籍企業の地域への進出のあとに発生した人権侵害により被害を受け、周縁化されたコミュニティが、場合によっては数十年も、裁判が行われるのを待ちわびているケースをあまりに多く報告している。企業セクターを適切なセーフガードなしに開発目標に関与させようとしている国々は、これら危険な問題について忘却しているのである。

 ボパールの毒ガス流出事故は、インド最大の工業災害となり、57万人以上の犠牲者が30年以上正義がなされるのを待っている。責任のある企業はユニオン・カーバイド社で、同社はその後ダウ・ケミカル社に吸収された。ボパール地裁はダウ社の刑事責任を追及しようとしているが、同社は聴取にすら応じていない。その間、生存者たちはインドと米国の両方での裁判を追及し、得られないでいるわけである。

 1989年の調停合意でユニオン・カーバイド社がインド政府に払った補償金は、発生した損害をカバーするにはまったく不足だったのであり、被害者に補償金を分配するのに深刻な問題が発生した。

 豊かな天然資源と貧しい規制体制を持つ外国で操業する企業は、傷つきやすい人々の支払いのうえに、巨大な利益を得ることになるのである。

 今年の初め、アムネスティ・インターナショナルはカナダと中国の巨大鉱山企業が、ミャンマー政府による人権侵害行為から、時には政府の共謀により、利益を得ていると警告を発した。ミャンマーの最も重要な銅鉱山では、非合法に自分たちの土地から連れてこられた何千人もの人々が動員され、深刻な環境リスクが無視され、また平和的な抵抗運動が暴力的に抑圧されている。

 不正行為の調査どころか、ある多国籍企業は英領ヴァージン諸島の不明瞭な信託ファンドを利用した投資の引き上げを行っていた。スキャンダラスな不正行為に直面した企業にとって、問題を正すのではなく、問題への曝露を極力減らすというのがモットーになっている。

 ニジェール・デルタ地帯の住民にとって、石油開発の半世紀がもたらしたものは彼らの農業や漁業の破壊に他ならない。今日まで、石油の流出事故はまったく止まないでいる。シェル石油の操業だけで、2014年には204回の流出事故が発生していた。シェル石油はサボタージュと盗難が問題だと述べているが、主要な環境汚染の原因は老朽化したパイプラインとメンテナンスが適切に行われていないインフラである。

 今年、ボドにあるコミュニティのひとつが、シェルによる大規模な石油流出の影響に対して8千億ドルの補償を命ずる判決を勝ち取ったが、これはイギリスにおける極めて長い裁判と、会社による虚偽の申し立てとの戦いの末であった。

 これらは、世界のリーダーが、企業セクターに対して融資の責任を持たせ、開発計画を実施させる計画を策定する際に熟考しなければいけない警告の物語である。これらすべてのケースで、政治と金融の権威は地域の人々が正義と説明責任にアクセスするさいのバリヤーを作っていた。

 政府は何十年も、人権が侵害されないことを保証するよう適切に規制するよりも、そこから逃れることにベストを尽くすような、企業の政治権力の増大を見守ってきた。

 企業のロビイストはその間、これらリスクを扱う重要な国際基準が完全に自主的なものに留まるように可能なことすべてを行ってきた。自主規制ルールや基準は、強制的な枠組みを持たず、企業の振る舞いを本当に変えるような力を欠いており、もし一度問題が発生すると、被害者をほとんど、あるいはまったく状況改善の望みがない状態に取り残してしまう。

 もし開発における企業セクターの投資が、単に企業の株主にとってではなく、それを必要とする人々にとって上首尾にすすむのであれば、国家は企業に対して門戸を開いておかなければならないだろう。持続的な開発に関する仕事から利益を得ようと望む企業は、人権に関わる問題について過去に問題を起こしていないか示す必要があるだろう。

 彼らは、人権侵害を引き起こさないことを保証する内部システムを持っていることを示す必要がある。企業は、地域コミュニティについて、権威者に払ったお金についてや、彼らに影響を与える地域での操業計画について、告知しなければいけない。

 重要なことは、政府が、問題が発生した時に企業に対して説明責任を要求する準備をしておくことである。国連の公的な援助目標額に五カ国を除いて到達していないということは恥ずべきことである。しかし、企業セクターに行動の自由を与えることで不足分を満たそうとするのは、すでに傷つきやすい共同体における人権侵害を導くのであり、これは持続的開発が癒すことを期待されている傷口に、かえって塩を塗りつけることに他ならない。


Savio Carvalho はアムネスティ・インターナショナル国際事務局(ロンドン)の国際開発と人権キャンペーン担当シニア・アドバイザーであり、20年にわたって南および中央アジア、東アフリカ、欧州に関する人権と開発の分野で働いてきた

[Resouce]
Opinion: Unrestrained ‘Privatisation of Poverty-Reduction’ Puts Human Rights at Risk

2015年7月17日金曜日

第3回開発資金国際会議終了、市民社会組織の多くは成果を批判

今週、エチオピアの首都、アディス・アベバで「第三回第3回開発資金国際会議」が開催された。
 国連は、会議の成功を主張するが、多くの市民社会組織は会議の成果は十分ではなかったと考えている。

国連は「アディス・アベバ・アクション・アジェンダ」(AAAA) が、歴史的な成果であり、特に11月に策定が予定されている国連持続的開発目標(SDGs)の実現の手段の基礎を提供するものだと主張している。

発展途上国からなるG77グループは、国際課税について、特に租税不正に実効的な新しいルールを策定できる、実行力のある新国連機関の設置に関する声明への署名を求めてきた。

この提案は、富裕国からなるOECD諸国の激しい反対に直面した。

ユーロダッド(債務と開発に関するヨーロッパ・ネットワーク)の声明は、「アメリカ、イギリス、日本の主導により富裕国が、政府間課税機関について議論することを拒否することによって、FfD合意全体を脅かしている」と批判している。

政策研究グループであるグローバル・ファイナンシャル・インテグリティは、租税回避や犯罪、腐敗などによって1兆ドル規模の不正な資金移動が、毎年貧困国から富裕国に流出していると考えられている。

G77諸国は、現在の国連税委員会を、より権力と資金をもち、各国が加盟する実行力のある政治機関にアップグレードすることを求めている。

提案は、南アフリカ共和国とエチオピアによって提出され、否決された。

OECDは声明の中で「税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)行動計画」を基にした「包括的なプロセス」を支援すると述べている。これは、34のOECD諸国、G20グループ、および地域を考慮した20の発展途上国が参加して策定された。

OECDの事務局長アンヘル・グリアは「この議論はひとつの組織や別の組織についてのもの、というわけではない。むしろ全ての人のための機能することを確実にするためのものだ。この仕事に関する我々のいかなる進捗も、発展途上国と先進国の両方の国々の利益を発生させるだろう」と述べた。

南アの市民社会組織CIVICUSの事務局長であるダニー・シュリカンダラジャー博士は「今週、私たちはポスト第二次世界大戦の開発に関する世界秩序の、おわりのはじまりを目撃しているのです」と述べる。

富裕国は、公的な援助資金をこれ以上増大させる能力あるいは意思がないように見える一方で、
 「FfDプロセスは、貧困を終わらせ、国際金融システムの問題を解決する意味のあるステップを踏み出すのに必要な投資を可能にする資源を生み出せていないことに、我々は失望している」と、彼は水曜日に行われた会議を結論付けた。

「今回の成果は、例えば税制のような、我々が必要としている領域に関するものの再構成を扱っていません。税制こそがほとんどの市民社会が望んでいたものであり、開発を可能にするための資源を増大させるのに必要なものです」

[Resource]

Civil Society Sceptical Over “Action Agenda” to Finance Development

Development finance talks in Ethiopia close to collapse: charities

Posted by Eurodad on 2015年7月16日

2015年7月16日木曜日

日米豪の合同演習に反対するオーストラリア上院議員ら

 中央クイーンズランドで行われているアメリカ軍との合同演習は、オーストラリアの独立を傷つけ、隣国に間違ったメッセージを送るだけであり、放棄されるべきだ、と緑の党の上院議員は述べている。

 活動的な緑の党の指導者であるスコット・ラドラムは、演習には三万人のオーストラリア、米国両軍が参加しており「遠征戦争と侵略」のためのものであると述べている。彼はまた、ショールウォーター湾の演習場に侵入した平和活動家の支援もしている。

 「オーストラリア国防軍に加わっている人々のほとんどは、自分たちがオーストラリア領土を守るためにいると思っている」木曜日にブリスベーンで行われた平和会議の会場の外で、彼は述べた。

 「それは、訓練で実際おこなわれていることではない。おこなわれているのは、砂浜に上陸し、他人の国を侵略するための訓練だ。私は、中国との戦争を準備すべきだと思わない。」タリスマン・サーベル演習と呼ばれている隔年の作戦は、国防省によれば「ハイエンド」な戦争を両国軍が訓練することになっている。

 今年初めて、日本の自衛隊員がこれに参加したことが、地域的緊張を悪化させていると考える人もいる。

 「安全と持続可能性のためのノーチラス研究所」のリチャード・ターナー教授は、ダーウィン近郊でも行われる「戦争ゲーム」演習が、オーストラリアにとって最良の安全保障上の利益にかなわないという。

 「私が考えるに、この戦争ゲームはアメリカ合衆国だけでなく、日本との歓迎できない統合を進めることになります。日本の政権は、1945年の終戦以降最もナショナリスト的なのです」

 ラドラムは、このような献身は隣国に「武装せよ」という間違ったメッセージを送ることになるという。

 「私は、このような挑発に参加すべきであるとは思いません」と彼は言う。

 平和活動家たちはオーストラリア・アメリカ軍事同盟への直接の異議申し立てとして、ショールウォーター湾の演習場に侵入している。水曜日に現地で、三人のキリスト教活動家が逮捕され、今週末にはさらなる抗議活動が予定されている。

 ラドラムは、銃撃戦のなかに入り込むかもしれないというリスクを冒す抗議活動を支援している。

 「それは危険なことだと思います。つまり、銃弾が飛び交っている最中のエリアに入り込むことになります」

 「これはいかに人々が問題を深刻に捉えているか、ということであり、ゆえに彼らにとって良いのです」

[Resouce]
Joint military exercise Talisman Sabre is inflammatory, says Scott Ludlam

2015年7月15日水曜日

ローマ教皇、グローバル資本主義への反抗と債務問題への対処を求める


 グローバル資本主義に対して若者の反乱を促す最新の呼びかけは、グラスルーツ・グループからではなくカトリック協会の長からのものであった。日曜日、パラグアイの若者たちへの熱のあるスピーチの中で、教皇は「ひと騒ぎするとき」であると訴えた。

 一週間にいたる南米歴訪の最後の公演で、フランシスコ教皇は支配的な経済システムを「悪魔の糞」と名指し、制度的な「金への強欲」が「男女を奴隷化し、苦しめる」「狡猾な独裁」であると批判した。

 首都アスンシオンの郊外のパラグアイ川の川辺で開かれた日曜の集会で、アルゼンチン人の教皇は筋書きを離れて、数万人の若者たちに語り始めた。
 
「彼らはあなた方への私のスピーチを書いてくれました。しかし、それは退屈なものです」とフランシスコ教皇は述べた。「ひと騒ぎしましょう。しかし、それを片付ける手助けもしないといけません。この騒ぎは、私たちに自由な心をくれます。私たちに連帯をくれます。私たちに希望をくれます」

 彼は、列席者たちに、数日前にバナド・ノルテのスラム街であったような、より幸運ではない仲間について顧みることを求めた。また、真の自由と責任、尊厳ある生を導く権利のための戦いの必要性について語った。

「私たちは弱い若さなど求めない。私たちは簡単に諦め、退屈な顔で疲れ切って生きる若者を求めない。私たちは希望と力に満ちた若者を求めている」

 教皇フランシスコの南米訪問は多くの人が「極めて先進的」と称賛する教皇回勅の一週間後に行われた。回勅の中で教皇はカトリック協会の指導者たちに気候変動に立ち向かうことは道徳的義務であると述べている。

[Resource]
Pope Calls on World Youth to Rise Up Against Global Capitalism


 フランシスコ教皇はラテンアメリカ歴訪を終えた記者会見で、国際的な「破産プロセス」が必要であると提唱した。

 「もし会社が倒産を宣告できるのであれば、なぜ国家がそうして、私たちがそれを助けにいく、といったことができないのでしょう?」と教皇はギリシャ債務危機に関する質問への答えの中で述べた。

 彼はまた、多くの国が課題な債務に苦しんでおり、国連が提唱したような破産の方法が必要であるとも述べた。この考え方は2014年9月に国連総会で承認されたものである。

 この提案はこの数カ月でより詳細に検討されており、またIMF(国際通貨基金)も2013年から、不平等(格差)の原因としての債務という観点から、破産プロセスの検討を進めている。

 世界銀行の統計によれば、50ほどの国がギリシャと同様の債務危機に直面しており、世界の債権市場における急激な利率の上昇や経済停滞の可能性といったストレスにさらされている。

 2012年以降、特にアフリカ諸国で主権者債務の急速な増大が見られている」とシンクタンク「海外開発研究所」のジュディス・タイソンは指摘している。一方で、グレンイーグルスG8で各国首脳が署名した債務救済プログラムの成功例になった国々もある。「前に進むためにクリーンな国にするというアイディアと共に、債務救済を受けた国々です」とタイソンは述べる。

[Resource]
Pope Francis Calls for Global Bankruptcy Process

アメリカ、遺伝子組替え食品の表示義務を禁止する法案が下院委員会を通過


 2015年6月14日、議論もなく、発声採決のみで、アメリカ合衆国下院農業委員会は、州が遺伝子組替え食品の表示義務を課す法律を無効にする法案を通過させた。エネルギー・商業委員会の採決はなく、法案は来週にも本会議に送られる。
 もし阻止できなければ、通称「すべてのモンサント保護法の母」が下院を通過し、舞台は夏が終わる前に上院に移る。
 委員会の前の公聴会で、食料・農業セクターの何人かの代表が、もし50の州、3000の郡、および20,000の市が彼ら自身の規制法を作ったら、それに対応するコストは膨大なものになるだろう、と述べた。
 一方、独立した専門家は幾度どなく、遺伝子組み換えへのラベリングのコストは、すでに60以上の国々がラベリングを義務付けており、これをアメリカで実施しても実際は無視できる程度のコストであると説明した。

[Resouce]
House Ag Committee Says ‘No’ to GMO Labeling, What’s Next?

「開発のための金融に関する国際会議」と国連持続的開発目標

現在策定中の「持続的開発目標」(SDGs)についてどのような議論が行われているかの一例となる記事を紹介する。ここで紹介するのは、主に世界銀行やIMFのような国際機関からのものであり、グラスルーツの社会運動からは大きな批判が寄せられている類のものであるが、批判的に検討する一助としてここに紹介する。

7月13日から第三回「開発のための金融に関する国際会議」がエチオピアの首都アディス・アベバで開催されている。主要な議題は、現在国連が策定中の野心的な貧困削減目標である「持続的開発目標」(SDGs)に関するものである。

会議前夜の7月10日、主要な開発銀行は共同で、三年間で4000億ドル、国連の持続的開発目標(SDGs)のための勇姿を拡張する計画を発表した。

先週末に発行されたプレスリリースの中で、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、欧州復興開発銀行、欧州投資銀行、米州開発銀行、世界銀行グループ(しばしば国際開発金融機関(MDBs)と総称される)はIMF(国際通貨基金)と共に、「民間および公的なパートナーとより緊密に、持続的開発目標(SDGs)の達成という歴史的挑戦に必要な資源を動員するのを助けるために働いていくことを誓約」している。

IMF専務理事クリスティーヌ・ラガルド氏はワシントンで8日、持続的な成長を促進するために、IMFが発展途上国の資金調達を増大させることを発表した。

IMFの理事会で承認されたこの変更は、開発途上国に対する譲許的融資を50パーセント増大させるものである。

さらなる援助が貧困で不安定な国々を対象に行われる。また、IMFは自然災害の発生した弱い国々に対するゼロ金利での早期貸付も管轄することになる。

ラガルド氏は三つの重要な会議、エチオピアで行われている融資に関する会議、11月にニューヨークで行われる国連サミット、パリで年末に予定されている気候変動枠組条約会議に言及し、これらは、IMFを含む国際コミュニティにとって、SDGsを達成するために発展途上国を援助する「機会を提供してくれる貴重な窓」である、とラガルド氏は述べた。

「これらの三つは私たちが曲を変えるのを助けてくれます。」と彼女は述べた。「私たちは、共同で新しいアプローチを選ぶ機会を持っているのです」

最初にリオ+20サミットで姿を現し、SDGsでは現在、貧困と不平等の削減、気候変動への取り組みなど17の目標が設定されている。これらは、次の15年間で国連加盟各国が国家政策として取り組む、グローバルな青写真を構成することが期待されている。

これらの目標は、2000年に、貧困に関する八つの目標として設定され、今年期限を迎える国連ミレニアム開発目標(MDGs)を引き継ぐものとなる。

多くの人が、SDGsは範囲が広すぎ、コストもかかりすぎると危惧している。

国連は2014年8月に、持続的開発のための金融に関する専門家による政府間委員会から、SDGs目標の一つである「すべての国からの極端な貧困の根絶」のためには毎年660億ドル前後の資金が必要であると報告を受けている。

「気候と調和した」シナリオの達成のための投資コストは毎年数兆ドルになる。

経済社会問題担当の呉紅波国連事務次長は4月18日に出版されたIMFの調査の中で、SDGsを達成するコストはMDSs を上回るものになるだろうと述べている。

「貧困の根絶に加えて、このアジェンダは経済、社会、環境の諸問題をカバーしています。この実施には膨大な額の金融資源が必要になるでしょう」と彼は述べている。

SDGsの金融面での実施には、国際援助のほかに、民間資源、パートナーシップ、およびメカニズムのイノベーションが必要になる、とレポートは述べている。

しかし、国際援助は未だ、低開発国、特にアフリカ諸国と内陸国にとって重要である。

1970年に、先進国は国民総所得(GNI)の0.7パーセントをODA(政府開発援助)に支出するという目標が合意された。しかし、OECD(経済協力開発機構)加盟国中、5カ国のみがこの目標を満たしている。

開発途上国にとってODAは経済発展と福祉のための資源移動の方法である。

ワシントンにあるグローバル開発センターのシニアフェロー、チャールズ・ケネディは7月7日のブログで、開発援助だけではSDGsのための数兆ドルの資金はうごかせない、と指摘している。

「真実は、開発はもはやほとんど援助の問題ではないということである」と彼は述べる。

彼は、各国政府の貸付やほかの収益になる金融資源のほか、海外で生活する移民からの送金、海外直接投資、開発途上国への民間からの貸付などについて述べている。

IMFはこれらの国々への貸付、支援、助言などを提供することで目標に貢献できるだろう。

ラガルド氏は発展途上国の税率を上昇させるといった方法を通じて、税収を上昇させることに注力できる、と述べた。彼女によれば、OECD加盟国の平均的な税収(DGP費)が34パーセントなのに対して、途上国の平均は15パーセントであるという。

「単純、公平で包括的な制度によって集められたお金を、正しい政策に従って使うことが、ゲームを変えます」と彼女は述べる。

 腐敗と戦い、補助金を削減することで非効率を排除することもIMFのもう一つの目標である。約30パーセントの公的支出が、公的投資プロセスのなかで非効率のために失われている、と彼女は述べる。

「彼ら(発展途上国)は彼ら自身でそれを行えません」と彼女は述べる「もし、国際コミュニティがこれらの努力に参加すれは、より一層多くのことができるでしょう」

By Zhai Yun Tan

[Resouce]

IMF Steps Up Lending to Achieve Sustainable Development

2015年7月14日火曜日

「人権のための医師」声明:司法省はアメリカ心理学会が拷問プログラムで果たした役割を調査すべきだ

「人権のための医師」(PHR)はアメリカ心理学会がブッシュ政権に協力し、拷問プログラムのデザイン、実施および防衛に アメリカ合衆国の拷問プログラムに対して果たした役割に対する連邦の刑事捜査を要求している。

2014年に、アメリカ政府とアメリカ心理学会の間の、ブッシュ政権の拷問プログラムに対する見せかけの法的、倫理的正当化を提供する秘密の取り決めを描いた『いかなる代価も払え: 強欲、権力と終わりなき戦争』で、ニューヨーク・タイムズの記者ジェームズ・ライゼンが共謀関係の詳細を告発した後、アメリカ心理学会は元連邦検察官のデヴィッド・ホフマンに独立レビューを委託した。拷問プログラムは、医療の専門家に、虐待的な捜査のモニタリングを行い、それらが「安全、効果的で合法」であることを主張しようとしていた。

内部文書やドキュメントのレビューとインタビューに基づいたホフマンの報告書は、アメリカ心理学会スタッフと役職者による犯罪的行為の膨大な証拠を明らかにした。それには、以下のようなものが含まれる。

1. 国防総省、CIAや他のブッシュ政権の部局との共謀により、ポスト911拷問プログラムの設計、実施および防衛に心理学者が参加可能なようにしていた。


2. 軍と諜報関係者が拷問プログラムのなかでの彼らの役割を「カバー」されることを確実にするように、彼らの活動を規制するアメリカ心理学会倫理ポリシーを書きなおすことを許していた。

3. こういった共謀関係を隠蔽し、アメリカ心理学会内のそういったポリシーに反対する試みをブロックする組織的活動に関与していた。

4. 拷問プログラムに関与した心理学者に対する調査を操作し、妨害した。

「人権のための医師」はアメリカの拷問プログラムにおける医療専門家の非合法で非倫理的な参加についての「人権のための医師」による10年にわたる調査から見出された事実が、別の調査からも確認されたのだ、と述べている。

[Resource]

U.S. Justice Department Must Investigate American Psychological Association’s Role in U.S. Torture Program

2015年7月10日金曜日

米軍、ヒューマン・テレイン・システム(HTS)計画を中止

 US Today 誌の報道によれば、アメリカ軍はヒューマン・テレイン・システム(HTS)計画を昨年秋に終了していたことを明らかにした。

同計画は、アフガニスタンやイラクなどの戦闘地域に展開するアメリカ軍に社会科学者が同行することで、民間人に対する無用の殺戮を回避するというものであった。
 2007年から2014年の間に、HTSには7億2600万ドルが投入された。
 原因としては、セクシャル・ハラスメントや、勤務時間の不正申告などが多発したことがあげられている。

また、この計画に関してはアメリカ人類学会などが研究倫理の面から懸念するレポートを発表し、中止を勧告していたため、同学会はこの中止という結論を歓迎している。

1960年代、米軍は「プロジェクト・キャメロット」と名付けられたプログラムのなかで、文化人類学者を雇用し、中南米を中心とした第三世界の反乱鎮圧プログラムに使うことを計画した。
 研究がこういった形で利用されることへの危惧から、アメリカ人類学会はこうした研究に会員が参加しないという決議を採択した。
 HTSに関しては、軍は直接的な軍事行動に使うのではなく、むしろ住民の命を保護することが目的であるから、プロジェクト・キャメロットとは事情が異なると考えていた。
 しかし、全米人類学会のレポートは、結局のところHTSで収集されるデータは反乱鎮圧にも使えるものになり、この業務に従事する人類学者は研究倫理綱領と業務の間に深刻な問題を発生させるだろう、としていた。

[Resource]
Army kills controversial social science program

AAA Applauds Decision to End Controversial HTS Program

CEAUSSIC Releases Final Report on Army HTS Program

バーニー・サンダース上院議員、大統領選で好調な発信

 バーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント州選出)がウィスコンシン州マディソンで行った演説会には、一万人を超える聴衆が詰めかけ、今回の大統領指名レースで今までのところ最大規模の集会になった。
 サンダースは、地元バーリントン(ヴァーモント)やデンヴァー(コロラド)でも5000人規模の集会を開いており、強い動員力を見せている。
 ヒラリー・クリントン元国務長官がニューヨークで開催した集会の参加者は5500人にとどまっている。また、共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)がリバティー大学(ヴァージニア州)で開いた集会は11000人を集めたが、この殆どは強力な学生組織の動員によるもので、自主的な参加がどれだけあったかは疑わしい。

 バーニー・サンダースは「民主社会主義者」を自称する、アメリカではめずらしい無所属の上院議員である。上院では基本的に民主党に同調して行動することが多いが、その主張は環境や貧困の問題などに関して、アメリカの政治家としては極めて左派的なものである。通常、左派候補が大統領指名選挙で善戦することはないが、今回、世論調査では、首位のクリントンとの差は明白であるものの、バイデン副大統領をわずかに抑えた二位につけている。

 マディソンは、2011年の、学校の経費削減や組合つぶしの法律を連発するスコット・ウォーカー知事(共和党)対する大規模な反対行動、いわゆる「ウィスコンシンの春」の中心地になったところである。
 この運動は成功を収め、知事のリコールに成功するが、知事は出直し選挙で当選する。リコールされた知事が出直し選挙で当選するのは合衆国史上初のことであったらしい。これは、2012年の大統領選を控えて、過度な「左傾化」を恐れた民主党本部が、ウィスコンシンの民主党グループに対して支援を手控えるように支持したことも一因であると言われている。このことから、地元の民主党支持層にサンダースへの支持が広がっているものと思われる。

 また、大統領予備選が最初に開かれるため重要視されるアイオワ州の調査では、サンダースの支持は33パーセントに上昇しており、クリントンとの差を着実に縮めている。


[Resouce]
Bernie Sanders’ 10,000-person crowd in Madison biggest of any Candidate so Far

Bernie Sanders draws biggest crowd of any 2016 candidate yet

バーニー・サンダース上院議員、2016年大統領選、民主党候補者予備選のダーク ホースか?

2015年7月9日木曜日

ドローンが暴く養豚工場の秘密


 ドローンを使って、ノースカロライナ州の養豚場を空撮している。ブタ自体は室内の畜舎で飼われており、コンクリートの床の糞尿は水で洗い流され、畜舎の外に併設された巨大なプールに集められる。糞尿のプールは、フットボールコート四つぶんもある巨大なものである。こういった形の養豚場は、ノースカロライナだけで2,000個ほどある。
 プールの糞尿は乾かすために、巨大なスプリンクラーで霧状にして噴出される。糞尿の霧は、近隣の住民の生活を脅かしている。一般に、そういった地域では、特に子どもに喘息などが多い。これは一種の「環境レイシズム」である。

[Rerouce]
factoryfarmdrones.com

2015年7月6日月曜日

国連加盟国193カ国中96カ国でなんらかの形での民主制の後退を確認


南アフリカ共和国に拠点をおく、国際的な市民団体のアライアンスである CIVICUS の調査によると、国連加盟国193カ国中96カ国でなんらかの形での民主制の後退が確認できるという。
 同団体は、特にアフリカ、中東地域で問題が深刻であるとしている。

Democracy on the Retreat in Over 96 of the 193 U.N. Member States, Says New Study | Inter Press Service

CIVICUS CIVIL SOCIETY WATCH REPORT JUNE 2015


マップ上で各国をクリックすると、問題とされた状況が確認できる。
Civil Society Watch Report 2015 -

ギリシャ総選挙 緊縮受け入れ側の国内のテレビ局への指示書がリーク


緊縮受け入れを主張していたギリシャのサマラス前首相が率いる新民主主義党(ND)が、国内最大のテレビ局に対して、国民投票で Yes への投票に誘導するように支持する文書を送付した、とFacebook 上で告発されている。
 文書は「怯えている女性や年金生活者」に「銀行に並ぶ人の列」を見せることで、Yes に追加の5-10パーセントを捻出することが可能であると論じている。



 真偽は必ずしも明らかではないが、文書は、No に投票するグループを 生産年齢(25-55、特に35-45)に属する都市中心部の住民で、2015年総選挙でSyriza に投票した層であると分析している。
 一方で、Yes 派の中心はは農村部に住む年金受給者であると考えてる。
 また、揺れているグループは、若い女性(18-25)で、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の支持から SYRIZA に支持を移した人々である。

その上で、No に傾いている人の中で、もともとPASOKを支持していた層が No に転じる可能性が高く、そこにリーチする言葉を選ぶ必要があると論じている。
 彼らがNDの政治家たちの説得を聞く可能性は低く、これは党派的な運動ではなく国民的な問題であることを強調すべきだとした上で、アテネとテッサロニキの両市長がデモなどでの緊縮アピールの先頭に立つとしている。
 また、テレビにはSYRIZAの政治家との討論を放送する際に、NDの政治家ではなく、ジャーナリストや産業界の代表を対比せるべきだとしている。

また、ユーロ対ドラクマ、チプラス対非政治家といった対比は Yes に誘導し、欧州対ギリシャ、チプラス対サマラスといった構図は No を導くと分析している。
 そのため、 Yes に誘導するために、ヨーロッパ圏内の、ユーロとともにある生命、尊厳、安定性、といったメッセージを伝えることとしている。

反対票のみごとな勝利 エリック・トゥサン(ギリシャ債務真実委員会科学コーディネーター ) コメント

ギリシャは7月5日、総選挙を実施し、IMFらが提案する緊縮財政案のこれ以上の受け入れに対して、No の投票が60パーセントを超え、事前の予想を超える大差で否決された。投票率は60パーセントを超え、規定の40パーセントを上回った。このため、国民投票の結果としてチプラス政権の主張通り、緊縮案が拒否されることになった。
 この結果について、ギリシャ債務の真実委員会の科学コーディネーターを務めているエリック・トゥサンのコメントが発表されたので紹介する。

【速報】ギリシャ、ヴァルファキス蔵相辞任を発表

ギリシャ国民投票で緊縮案受け入れが拒否された後、同国のヴァルファキス蔵相が自身のブログで辞任を発表した。
 国民の決断を支持するとともに、債権者の敵意を集めすぎたので、交渉者を変えて挑んだほうが政権にプラスと判断、と説明している。

Minister No More! | Yanis Varoufakis

2015年7月2日木曜日

国連人権問題独立専門家のギリシャ国民投票に関する声明


6月30日、アルフレッド・デ・ザイアス氏(民主的で公平な国際秩序の促進に関する独立専門家)とヴァージニア・ダンダン氏(人権と国際連帯に関する独立専門家)はギリシャの国民投票を歓迎する声明を発表した。
 ふたりの専門家は、6月初頭に国連独立専門家ファン・バブロ・ボホスラブスキー氏によって出された声明に呼応して、債務返済という義務よりも重要な論点があるということを強調した。

[Resource]
UN human rights experts welcome Greek referendum and call for international solidarity

すべての人権に関する機関とメカニズムはギリシャの国民投票を、市民的及び政治的権利に関する国際規約1条と一致し、かつ公的参加を規定した25条を履行するものとして、ギリシャの人々の自己決定権の説得力のある表現として、歓迎すべきである。実際、民主的で公平な国際秩序は、すべてのステークホルダーの政策決定プロセスへの参加と、適正な手続き(デュープロセス)の尊重を要求する。それらは、金融危機を含めたすべての問題の解決に対して、国際連帯と人権というアプローチを通すことによって最もよい形で達成できる。

IMFと欧州連合が、さらなる退行的な緊縮経済措置を要求しない解決法にたどり着かなかったことは残念である。各国首脳の一部は、ギリシャの国民投票という考え方に失望を表明している。何故だろうか? 国民投票は伝統的に最良の民主的ガバナンスである。

ギリシャ首相以外の誰も、さらなる失業と社会的困窮をもたらすようなギリシャ民主制を瓦解させない公正な解決策のための交渉という明白な責務を課して彼を選出した民衆に対して、首相が示した取り組みを放棄させることはできない。

ギリシャの民衆にさらなる緊縮政策を押し付ける最後通牒に屈服することと、有権者からギリシャ首相に与えられた民主的信託とは相容れないものだ。本質的に、すべての国はその支配下に住むすべての人々の福祉を守る責務を持っている。これは、別の国家なり国際機関なりといった外部からかき乱されてはならない支配空間と財政および予算上の主権を包含する。

国連憲章103条は、この憲章の条項が他のすべての国際条約に優先されると述べている。したがって、いかなる条約や融資協定も、加盟国に対して、その国の人々の市民的、文化的、経済的、政治的および文化的権利を侵害するように強いることはできないし、国家主権を無効にする融資協定もあり得ない。このように人権と慣習的国際法に反する行為を求めているいかなる協定も、条約法に関するウィーン条約53条にしたがって「良俗に反するが故に無効」である。

 民主的で公平な国際秩序は、すべての人権を達成することを促進するような商業的、金融的な体制を要求する。

対外債務は人権に抵触すること、あるいは経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第2条およびだい第5条違反という退行を引き起こすことの理由にはならない。

 2013年に、対外債務と人権に関する独立専門家は、IMF(国際通貨基金)、欧州委員会および欧州中央銀行からの追加融資を確定するために受け入れる緊縮財政が、ギリシャ経済に不況をもたらし、これまで享受されていた人権状況、特に経済的、文化的、社会的な諸権利を毀損すると指摘していた。

 今こそ国際社会はギリシャの人々に対しての連帯を実演し、国民投票で表明される彼らの民主的意思を尊重し、彼らの責任ではなく、主に2007年から08年にかけての金融メルトダウンによって引き起こされた金融危機から彼らを救済する積極的な行動に出るべき時である。

 実際、民主制とは自己決定権であり、自己決定権は国民投票を招来するものであり、これはギリシャも例外ではない。

2015年7月1日水曜日

第二次世界大戦時、アメリカ軍による化学兵器の人体実験

日本軍が、中国で捕虜を使った人体実験を行っていたことは有名だが、アメリカ軍も大戦中、マスタードガスといった化学兵器の開発のために、人体実験を行っていた。
 ただし、アメリカ軍が利用したのは、自国の兵士である。
 これは、1993年に機密解除された資料によって明らかになった。

マスタードガスは直接触れた時のダメージもあるが、DNAレベルで損傷を与えるため、被験者は白血病、皮膚ガン、気管支炎などに長く苦しむことになる。

アメリカ軍は、人種的特性によって効果がことなる可能性を検討するため、白人、アフリカ系アメリカ人、プエルトリコ人、といった人種ごとに分けて実験を行っていた。
 日本軍への効果を確かめる必要から、そのなかには日系人も含まれていた。

スーザン・マツモトの夫、トム・マツモトは2004年に亡くなったが、そういった被験者の一人であった。
 スーザンによれば、トムは被験者になったことを「よきアメリカ市民であることを証明できた」として受け入れていたという。
 スーザンは、彼女の家にFBIが押しかけてきて、「アメリカ合衆国への忠誠心を証明するため」日本語の本を焼かせた時のことをよく覚えている。
 彼の夫の家族も同様の目にあってきたが、それでも夫はアメリカを愛していた、なぜなら「こんなに自由であれる場所を他に見つけることはできない」からだ、と語っていた、という。

[Resource]
Secret World War II Chemical Experiments Tested Troops By Race