2015年6月16日火曜日

Wikileaks 、TPP交渉資料をリーク: ニュージーランドの処方箋制度を標的か【 修正、追記あり】

Wikileaks は、TPP(環太平洋経済協力協定)交渉に関する内部資料とされるものを発表した。
TPP Transparency Chapter(on June 10, 2015)
  ※画像も同サイトから
TPP交渉は交渉に参加する各国の議会にすらも内容は秘匿されて行われており、そのことに対する批判はアメリカ内部ですらも大きい。
 Wikileaks はこれまで、このTPP交渉における内部資料をリークしてきており、常緑化(エバーグリーニング)等、知的所有権に関して多国籍製薬企業を有利にすると考えられる条項の存在が明らかになってきている。
 今回リークされた資料は、WIkileaks が同時に発表した専門家の分析レポートによると、ニュージーランドのPharmac(New Zealand’s Pharmaceutical Management Agency / ニュージーランド医薬品管理庁)を標的にしたものだと考えられる。


 Wikileaks のサイトで懸念を表明しているのはラトローブ大学(オーストラリア)のデボラ・グリーソン博士(グリーソン氏資料:PDF)と、オークランド大学(ニュージーランド)のジェーン・ケルシー教授(ケルシー氏資料:PDF)である。
発表された資料はTPP協定の「透明性」に関する付属書の一部であるとされ、2014年12月17日の日付がある。
 文書は、参加国の「国営のヘルスケア・プログラム」に対して、どのような薬品や治療機器に対して保険を認めるかの決定について、高いレベルの「透明性」を求めるものとなっている。
 「透明性」といえば聞こえはいいが、これは、どの医薬品や医療機器が対象であると認められるかの決定プロセスに対して、多国籍企業が介入する仕組みを作るように求めるものである。
 文書は、対象になるリストの決定に際して、十分な公示期間、「公式でよく定義された」提案を審議しなければいけない義務、またそれに関わる訴訟手続を明示するように求めている。
ケルシー氏によれば、文書が「公的なヘルスケア機関によって運営されているヘルスケア・プログラム(‘national health care program’ run by a ‘national health care authority’)」に狙いを定めているのは、主にニュージーランドを対象にするためである。
 たとえばアメリカ政府が運営するメディケアはすでに同様の規制を別のFTAで受けており、またここでも、多くの保険(たとえば州政府や国防総省が運営している)はこの条項の対象から除外されることが念頭にある。
 なぜニュージーランドの Pharmac がTPPのターゲットになるかといえば、これは極めて効率のよいヘルスケア制度として、多くの国が手本にしているからである。2013年に発表されたオーストラリアに関するレポートによれば、もしオーストラリアが同様のシステムを採用すれば、同国は16億オーストラリア・ドルを節約できる見込みである、と論じられている。
 現在、第三世界の多くの国がニュージーランドをモデルに制度の整備に関する議論を行っており、ここに楔を打ち込むことは、製薬企業にとって重要である、とケルシー氏は分析している。

 ※以下のご指摘をいただきましたので、当該部分の表現を修正しました。ご了承ください(2015/06/16)。