2015年6月18日木曜日

ギリシャ債務の真実委員会によるレポート

 ギリシャ債務の真実委員会による最初のレポートのエグゼクティヴ・サマリーが公開されている。
 レポートはギリシャ債務の増大の原因が、主にEU各国の民間銀行救済の目的で、また不正な形で、ギリシャの一般市民への影響を考慮せずに行われたものであるとして、ギリシャ政府が債務の返済を停止ないし拒否する合法性、正統性があると結論づけている。

 Executive Summary: Greek Public Debt Audit report




 以下に前文部分を翻訳する(章立ての部分は追って公開予定)。
ギリシャ公的債務監査レポート エグゼクティヴ・サマリー
  2015/06/17 ギリシャ債務の真実委員会
 2015年、ギリシャは、債権者に押し付けられたマクロ経済調整プログラムの失敗をさらに続けるのか、債務の連鎖を破壊することで真の変革を成し遂げるかの岐路にある。
 構造調整プログラムが始まってから5年で、この国は経済的、社会的、民主的、環境的な危機に深くはまり込んでしまった。債務のブラックボックスは閉じたままであり、今に至るまで、どの公的機関(ギリシャの、あるいは国際的な)も何故そして如何にして、ギリシャがトロイカの標的にされたかの真実に光を当てようとはしてこなかった。 
 債務はなおも、ネオリベラルな構造調整を通じて支配者の地位にあり続け、平和な時代としてはかつてなく長く深い不況が続いているのである。
 適切な熟慮を要求する幅広い法的、社会的、経済的問題に取り組むという社会的責任と喫緊の必要性がある。これに応えて、ギリシャ国会は「債務の真実委員会」を2015年4月に立ち上げ、債務の発生と肥大化の経緯、債務が契約された方法と理由、融資の条件が経済や人々に与える影響といった問題に関する調査に任じた。真実委員会は、ギリシャ債務問題に付随する問題についての意識喚起を行い、債務の帳消しに関する議論と選択肢を定式化する権限を持っている。
 議会に提出される委員会の報告書のための調査によって、ギリシャを屈服させ、政治志向のプログラムとして現在も残っている調整プログラムの全容に光が当てられた。マクロ経済的な変数、債務の見積もり、人々の生活や生計に直接関する経済指数等は、債務に関する議論を、主にギリシャが強制された政策は債務返済能力を向上させるかどうかという論点を巡って紛糾する技術的なレベルに留めることになる。この報告書で提示された事実は、この議論を変えるだろう。
 我々がこのレポートで提示するすべての証拠が、ギリシャが単に債務返済の能力を持っていないということだけではなく、なによりもまず、トロイカの手によって作り上げられた債務がギリシャに住む人々の根本的な人権に反する行為であるがゆえに、返還するべきではない、ということを示している。したがって、我々はギリシャが、これらの債務が違法であり、非正統性であり、汚いものであるがゆえに、返済を拒否すべきであると結論づける。
 ギリシャの公的債務が持続可能なものでないことは、最初の時点から国際的な貸し手、ギリシャ政府、および企業メディアにも明らかであったというのが委員会の理解である。ギリシャ政府はEUの他の国々の政府と共謀して、金融機関を守るために、2010年の公的債務に関する構造改革に抵抗した。企業メディアは、人々が彼らの悪事の報いを受けているかのように描くことを意図した説明を作り出す一方で、緊急援助(ベイルアウト)がギリシャの利益に適うかのように描く(/スピンする)ことで、真実を公衆の目から隠蔽した。
 緊急援助は2010年と2012年のプログラムで実施されたが、極めて複雑な手順で外部から管理されており、会計上の自律は阻止されていた。この救済措置からの資金は貸し手から厳格に強制されたもので、政府の経常支出に宛てられたのは僅か10パーセント以下であった。
 この中間レポートは、公的債務に関する鍵となる問題や論点の事前整理を提示し、債務の契約に伴う鍵となる違法行為に注記するためのものである。さらに債務支払いを一方的に停止する場合の、法的基盤について調査する。
 この調査は、以下にあげる9章からなる報告書で説明される。
 (以下、後日公開予定)