Nyéléni ニューズレターの22号が発行されています。
Nyéléni は西アフリカのマリにある町の名前で、2007年に世界各国から小規模農家のネットワークがそこに参集し、食料主権と小規模農業の権利を訴える会合を開きました。
これは、Nyéléni宣言としてまとめられ、またその後も定期的に政策レポートやニューズレターが発行されています。
今回発行された22号は、食料主権と適切な栄養摂取の権利の関係をあつかっています。
パレスチナの事例など、興味深い話が掲載されていますので、その囲み記事の部分を抄訳し、ご紹介します(逐語訳ではないことにご注意くださいご注意ください)。
ガザの都市農業
イスラエルによって占領が続くパレスチナ、ガザ地区では、小さな、しかしどこにでもある建物の屋上スペースが、コミュニティが生き残り、占領に抵抗するための必要なスペースになっている。
元々人口密度が高いガザ地区は、難民の流入、下水システムがダメージを受けて機能していないこと、イスラエルによる緩衝地帯の拡大などによって農地を確保することがさらに困難になってきている。緩衝地帯はガザの耕作可能な面積の3割を占めているが、そこに入ることは大変危険である。
多くの家庭は、安全で栄養価の高い食物を得るため、収入の足しにするため、また環境の改善のために、屋根のうえでトマトや唐辛子などを栽培している。市場に食料が不足していたり、紛争が始まり市場にアクセスすることすら危険になった時に、これらは貴重な食物になる。
パレスチナ農業救援委員会(PARC)はこれらの都市農業を支援している。
メキシコでは、大規模農家を優先するような農業政策がとられており、小規模農家は危機的な状況にある。
都市部の健康のための闘争という意味では一定の進歩があり、「健康的な色のための同盟」は炭酸飲料や学校における炭酸飲料の販売に課税させることに成功した。また「市民の集団的要求」という団体の運動は、遺伝子組み換え品種の導入を阻止し、伝統的なメイズを守った。
CSA (地域支援型農業)
URGENCI http://urgenci.netは、国際的な地域支援型農業 (CSA / Community Supported Agriculture)のための組織で、Nyéléni ヨーロッパ運動に参加している。このネットワークは、生産者と消費者が連帯し、リスクとベネフィットをシェアする、という原則のもとに作られている。100万人以上の会員が参加している。主要な目的は、食料供給における、小規模農家の役割を強化し、食料供給を地域と小規模農家のものにすし、またこの短い食料供給ラインに残ってくれる農家への連帯を強化することである。
栄養問題と適切な食料の権利という観点からみたCSAの重要な役割は、コミュニティの周縁化されているメンバーに、メカニズムの多様性を通じて参加してもらうことである。興味深い事例は、アイルランドの有名なエコヴィレッジであるクラジョーダンである。ここでは料金のスライド制を採用しており、老人、失業者および学生は、働いている人より少ない料金しか請求されない。このシステムは信用を基盤にしており、野菜は単に置いてあるだけであり、人々は必要なだけそこから持って行く。これは、人々にどの程度の量が本当に必要なのか真剣に考えてもらい、アクセスの平等性を保証し、また無駄に捨てることを思いとどまってもらおう、という目的がある。CSAの鍵は、必ずしも認証を受けなければいけないわけではないが、有機であることであり、また地域の生産者と消費者を繋げることで、新鮮さを最大限に保つということである。
次の URGENCI の国際会議は中国で開かれる。中国には500のCSAがあり、750,000家族が運動に参加している。
よい栄養摂取へのステップ
1. すべての女性と男性が生産のための資源、仕事と収入に対して平等なアクセスとコントロールが可能であること。
2. 女性が学習、労働、そして彼らの身体と生活の完全なコントロールの権利を約束されること。
3. 家族と共同体(コミュニティ)は、食料主権のための最初のステップとして、女性が授乳するための条件をととのえることを約束すること。
4. 小規模農家、共同体および消費者は、参加型の手法に基づいて公的な食料および栄養摂取ポリシーを定めること。
5. 農産業(アグロインダストリー)と大規模農家および流通は、公共の利益によって制限されること。
6. 小規模農家による、アグロエコロジーの原則に基づいたローカルで多様な生産に優先権を認めること。
7. ローカルに作られた新鮮で多様な食料、アグロエコロジーでつくられた食料、ローカルな市場などで購入されたものを優先的に消費していくこと。
8. 伝統的なレシピに基づいて、あるいは新しく作られたレシピに基づいて、自分自身で調理すること。
9. 油、脂肪、塩と砂糖は少量に止めること。
10. 加工食品は控え、過剰加工(Ultra-processed)された食品は使わない
11. 適切な時間に、規則正しく、食べることに集中し、できれば友人や家族の誰かと食べること。
12. 食料の市場化に対して批判的であること。
13. 定期的に運動すること。
※訳注 過剰加工(Ultra-processed)とは、サンパウロ大学のカルロス・モンテリオ博士によると、甘味料や乳化剤をわざわざ添加した食品である。