2015年7月25日土曜日

Eurodad: アディス・アベバ・サミットは開発のための資金問題を議論するに十分ではなかった。

すでに何度か紹介した「国連開発資金国際会議」であるが、債務の問題に取り組んでいる欧州の市民社会組織であるユーロダッド(Eurodad)によるまとまった論考が発表されたので、訳出する。
 ちなみに、Facebook では、「アメリカ、イギリス、日本の主導により富裕国が、政府間課税機関について議論することを拒否することによって、FfD合意全体を脅かしている」と批判していたが、本文ではアメリカ、イギリスに加えて(日本に変わって)フランスの名前が挙げられている。要するに、G7に参加している主要国が、改革の阻害要因とみられているということであろう。

開発資金に関するアディス・アベバ・サミットは今日のグローバル金融システムの不公正と欠点いついての議論を再び活性化させるプラットフォームになった。しかし、サミットは解決策を提示するには不十分であり、唯一の決定的な前進は、毎年定期会合を開催していくという決定だけである。このサミットは、大団円というよりは、開発資金に関する長い道のりの最初の一歩になった、というべきである。アディス・アベバまでの道のりのなかで市民社会と第三世界諸国が主導してきた変革推進の強い力は、今後も継続され、成長させられなければならない。

アディス・アベバに集まった市民社会組織(CSOs)は会議場の廊下に「ニューヨークで会いましょう」という巨大なバナーを掲示することで、会議の残念な成果への失望を表明し、諸国の政府に、このキャンペーンが、開発目標に貢献しうる変革を達成できるようシステムを変革するまで続けるべきであることを示した。今回掲げられた問題の多く、特に、税、民間金融、開発援助、債務の問題に関係することが、CSOsのアジェンダの域に留まっている。アディス・アベバで構築されたCSOsの間でのグローバルな共同作業と、アディス・アベバの欠点に対する公的な認識と批判が知れ渡ったことが、おそらく最も重要な会議の成果でしょう。


国際的な脱税行為を止める国際機関

毎年数兆ドルがグローバルな税システムの欠陥によって失われているという事実を受けて、開発途上国はグローバルな税基準に関する決定を行う会議のテーブルにつくことを求めて、アディス・アベバに集まってきた。彼らは国際的な脱税と不正な資金の流れを防ぐための新しい国連機関の設置を求めている。それは、金持ち国クラブと揶揄されるOECDから、この問題に関するグローバルな決定の権限を受け継ぐものになる。OECDが決定権を持っている限り、100カ国以上の発展途上国は、政策決定プロセスから排除されていることになるのである。

 「グローバルな税機関」に関する議論は、非常に白熱したものになり、アジェンダ上で最も際立った議題になった。しかし、イギリス、フランス、アメリカ合衆国などにリードされた先進諸国は、税機関に対する全ての言及を削除させ、OECDだけがグローバルな税基準に対する議論を行う唯一の国際機関であるという現状を維持している。これは、彼らを歓迎しない閉じられた部屋で決定され続けるグローバルな税基準を受け入れさせられる発展途上国にとってだけの悲劇ではない。これは実際のところ、すべての人にとっての悲劇である。なぜなら、50年以上にわたってOECDが決定権を支配してきたが、その結果が示すように、半数以上の国々が政策決定から排除された状態でつくられたグローバルな税システムが実効的なものにはなりえないからである。世界の政府がグローバルに共同し、壊れた税システムの修正に取り掛かるまでは、多国籍企業は産業界規模で脱税を継続するだろう。幸運なことに、変革を求めるグローバルな圧力は、これらの問題をアジェンダから外しておくことが不可能なまでに高まっている。グローバルな税機関を求める18万人以上の署名が Avaaz の請願サイトをつかって集められ、130以上の発展途上国を含むG77諸国は、彼らがこの問題に対する要求をし続けることを強調して会議を終えた。したがって、人々の視線は、キャンペーンの次の目標として自然に、2016年の継続会議に向けられている。


 民間金融の規制なき受け入れ

 民間金融の開発のための関与という問題に関してもまた、アディス・アベバの成果は幾つかの重要な挑戦に関する議論を十分行えていない。民間金融はすでに多くの開発プロジェクトで中心的な役割を持たされて受け入れられており、それらが十分な成果を上げた記録はまだなく、また企業が人権に適合することを保証する基準も非強制的なものにとどまっているにもかかわらず、発展途上国に対する民間資金の流れをレヴァレッジ(テコ入れ)するメカニズムは推奨されている。海外民間投資のフローに対する過剰な信用は、それらのフローが有意なリスクを伴うことから、公衆の利益を最大化するように慎重に管理されなければならない。リスクを扱うことの重要性は、Eurodad第三世界諸国の政府、研究者によって指摘されてきた。特に、公式の会議と並行して行われたラウンドテーブルでのジョゼフ・スティグリッツの指摘は一見の価値がある。

会議の成果は、強力な妨害措置のおかげで、官民パートナーシップ(PPPs)に関係して生じる様々な問題も扱うことに失敗している。これらは、Eurodad が最近出版した『どんな嘘が隠れているのか?』で強調している問題である。その他の問題の中で、これらのパートナーシップは、リスクを発展途上国側に残す一方で、企業パートナー側に「獅子の分け前」(一番いい部分)を明け渡すはめになることが多い。その結果、金融上の問題を引き起こし、発展途上国の債務レベルを悪化させることになる。PPPsの真のコストを明白にし、PPPsにおける説明責任と透明性を向上させるために、まだまだなされなければならないことが多数ある。今後の議論の一環として、国連は、PPPsの利用に際しての、包括的で開発に集中するための原則と基準を発展させていくために、包摂的で、公開され、透明性の高い議論の場を招集するという役割を果たすべきである。


債務危機に関する具体的な解決策はなかった

会議の公式の成果が解決策を提供できなかったもう一つの、分野は債務問題に関するものである。いくつかの国はすでに債務危機状態にあり、それ以外にも多くの国が重い債務に苦しんでいるにもかかわらず、いかなる具体的な債務救済イニシアティヴも合意には至らず、合意文書には主権者債務の構造改革という原則についての曖昧な言及のみが含まれている。したがって、未来の債務危機を防止し、管理するためにどうしても必要であり、現在失われている多国間債務の構造改革枠組みの発展はほとんど見られなかった。

皮肉なことに、サミットの間ニュースを独占していたギリシャ危機の深刻化は、開発にとって解決できない債務危機がいかに有害なものかを示す明確な警告になった。しかし、アディス・アベバが解決策を提供することに失敗したおかげで、この仕事は現在、ニューヨークで7月後半に開かれる国連総会とそれに付属する債務再建委員会の手に委ねられることになった。


 開発援助のレベルの低下

 政府開発援助(ODA)に関する議論はアディス・アベバ・サミットではあまり時間が取られなかったにもかかわらず、現在の発展は会議に喜ばしい背景を提供しているとは言い難い。後発開発途上国は国民総所得(GNI)の0.7パーセントをODAに費やし、特に0.15パーセントから0.20パーセントを後発開発途上国へのODAに費やすという費やすという、古い約束の達成を確定するタイムテーブルを求めている。アフリカ諸国は、従来の約束を2018年までに達成し、2020年までに新しい目標としてGNIの1パーセントという目標を設定するように求めている。さらに彼らは総予算の50パーセントが後発開発途上国に向けられるべきだと呼びかけている。

不幸なことに、この問題に関する合同声明の作成に際して、欧州連合(EU)はこれらの提案に合意しなかった。この声明では、ODAに関する約束はポスト2015アジェンダのタイムラインの中で実行されるべきだと述べている。これはおそらく、持続的開発目標(SDGs)のデッドラインである2030年までに、という意味であり、市民社会はデッドラインまでに十分な資金提供がなされないリスクを強調している。その間、フィンランド政府はODAの43パーセント削減を発表し、デンマーク政府も現在のGNI比0.85パーセントから、0.7パーセントまで、およそ15パーセント程度のODA予算削減を発表した。

ODAは依然として後発開発途上国にとって非常に重要な役割を果たしているにもかかわらず、アディス・アベバ・サミットは、すべての発展途上国がより信頼できる財源からの追加の資金を動員できるようにする努力にすべての力を傾注しなければならなくなっている状態を明示的に示した。これは、グローバル金融システムのリフォームが強く求められていること、国際的な脱税、民間金融に付随するリスクおよび債務危機に取り組む真の解決策が呼びかけられていることの主要な理由である。これらは、アディス・アベバ・サミットの終了後も長く継続していかなければいけない。


[Resouce]
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