2015年5月27日水曜日

ギリシャ「債務の真実」委員会発足


1. ギリシャ「債務の真実」委員会発足について
2. ギリシャ国会議長ゾエ・コンスタントプロウ演説
3. CADTM代表エリック・トゥサン演説


1. ギリシャ「債務の真実」委員会発足について

2015年1月に行われたギリシャ総選挙(定数300 一院制)で、急進左派連合(SYRIZA)は149議席を獲得して第1党になった。反緊縮をかかげ、EU離脱も辞さないとするSYRIZAの姿勢は、緊縮財政によって国民生活が悪化する中、既存二大政党(中道右派の新民主主義党や中道左派の全ギリシャ社会主義運動)を抑えて大きく支持を伸ばした。とはいえ過半数を獲得できなかったSYRIZAは、反緊縮と反EUを掲げる右派の「独立ギリシャ人」と連立を組むことで政権を獲得し、アレクシス・ツィプラス党首が首相に就任した。ツィプラスと、蔵相に就任した経済学者のヤニス・バルファキスは、債務の返済と、そのための緊縮財政の継続を求めるトロイカ体制 - 欧州中央銀行(ECB) 、欧州連合(EU) 、国際通貨基金(IMF) - およびドイツに対する債務の帳消しやリスケを求める交渉に入る。
 この時、ギリシャは交渉に対して、様々な次元での主張をしている。一つは、緊縮財政が経済学的に見て効果がない、といったことである。また別に、緊縮財政が庶民の生活を直撃し、生活が悪化しているので、人道的な見地から緊縮の解除を求める、というものである。ギリシャは、このロジックとして、ドイツが第二次世界大戦の戦後処理において、第一次世界大戦時からのものを含む戦時賠償の債務に対する緩和措置を受けた(ギリシャもこれに協力した)ことを持ち出し、同様の債務会議を開くことを求めている。
 最後に、ギリシャが抱える個別の債務について、不法であったり不公正であることが立証できる場合は債務の返還を停止する、という手段も検討されている。
 この債務監査委員会という手法は、公的にはすでにエクアドルが実施済みである(でっと ばい Debt Bye! など参照)。また、市民レベルでは各国で様々な形の運動が行われている。国連も関心を示しており、国連人権委員会が調査を行っている。 債権者、つまり多くの先進国の側の反応は(当然のことながら)鈍いが、ノルウェーがエクアドル、エジプトなど5カ国に対する8,000億ドルぶんの「不公正な債務」を帳消しした例などがある。

今回、ギリシャは国会に付属する形で「債務の真実」委員会を発足させた。ギリシャ国内のみならず、この問題に長く関わってきたベルギーの市民社会組織であるCADTMのエリック・トゥサンや、エクアドルの監査委員会にも参加していたマリア・ルシーダ・フェトレリ(ブラジル)、債務に関して国連人権委員会の独立専門家を務めているセファス・ルミナ(ザンビア)などの海外からの専門家が参加している。

以下に、今年4月7日に行われた発表記者会見から、委員会を招集したギリシャ国会のゾエ・コンスタントプロウと、技術面を取り仕切るCADTMのエリック・トゥサンのコメントを訳出する。特に、コンスタントプロウのスピーチはギリシャ語、フランス語、英語と経由して日本語になっているため、原文をどの程度反映しているか心もとない面もあるが、緊縮に対するギリシャの人々の体験をよく表していると思われるため、あえて訳出した。また、SYRIZA政権の姿勢は反EUであるが、オルタグローバリゼーションを支持する左派政党であるが、そのことがよく表れているのがスピーチの中で「苦境にあえぐ市民」の例として、あえてギリシャ人だけでなく、移民の若者の例を挙げているところである。移民の少女以外の若者たちの例も日本であれば「自己責任」と一笑に付されるだけかもしれない事例だが、これをこういった場で取り上げる、という姿勢は注目に値するだろう。

エリック・トゥサンのスピーチは、「不法な債務」「不公正な債務」「汚い債務」という概念の簡単な説明を含んでいる。これらは国連や専門家の議論のみならず、世界社会フォーラムなどで現場の市民社会組織や実際に主権者債務に苦しむ第三世界の人々の声を吸収する形で発展させられてきた、現在進行形で生成しつつある国際法概念である。





2. ギリシャ国会議長ゾエ・コンスタントプロウ演説(英語版

みなさま、本日は歴史的重要性を持つイベント、ギリシャのすべての市民、とりわけ若い人々の頭上にのしかかっている債務がどのようにして起債され、増大し、あるいは作り上げられ、膨らんでいったのかに関する真実をギリシャの人々と社会に明らかにすることによって、真の債務の返還の始まりにするためのイベントにお集まりいただきありがとうございます。強請と征服のための道具として、民主制、平等、財産、人権の尊重、自由、社会的な発展といった普遍的な原則が失われた後の服従の道具として使われてきた公的債務は、民主的な空間を後退させ、差別、排除、極端な貧困と人道の危機をもたらしてきました。
 債務は不可避の運命ではありません。それは不公正な条件と不可解な利子率のもとでの債務契約に関する、金融マネージメント方法に関する行為および怠慢の結果です。しかしまた、これは法廷や議会にある資料が示すことですが、汚職に侵された合意が債務を鰻上りに増大させました。
 債務には疑問があります。それが十分に管理され、条件づけられておらず、また分析もされいない時、次のような疑問が抱かれます。つまり、どれくらいの債務が最終的に正統なものであり、どれくらいが正統ではない、非合法、あるいは「汚い」債務なのでしょうか。今年、これらの疑問を追求することが、これらの債務を返済するように求められている人々に、彼らの民主的権利についての合意の中で、どのようにこれらの債務がつくられ、それには何が含まれるかを語らしめ、そしてこのことが、変才の責務に抗して、負債の帳消しを求めることで彼ら自身を守れるようにするのです。


◯公的債務監査は、市民の民主的な権利というだけではなく、国の主権に関わる権利でもある。

公的債務監査は、市民の民主的な権利というだけではなく、国家の主権に関わる権利でもあります。であると同時に、欧州連合の法律に照らしてすらも、国家の制度的な義務でもあります。これは、つまり国にとって、国際義務であるということです。国際義務というのは、これを金融上の義務という観点のみから語りたがり、国家にとってより重要な国際義務である、民主制、透明性、人権と自由や、その他諸々の生活を生きるに足るものにするための全てに対する敬意というものを無視しがちな人々がお気に入りの表現です。

債務は、単に利益と損失という話ではなく、人々の生活の話なのです。
 この債務を返済しようという試みのために、何千人もの人々の生活が犠牲になり、あるいは何百万人もの人々の生活が傷つき、破壊されました。今日、私は異なる世代に属する5人の方について思い出してみたいと思います。
 ある若い少女がいます。移民の子であり小学生である彼女は2013年12月に命を落としました。彼女が数ヶ月、彼女の母親と住んでいた家には電気がなく、間に合わせの暖炉からの有毒なガスで命を落としたのです。
 19歳の青年は2013年の夏に、バスの改札を逃れようとして命を落としました。
 20歳と21歳の若者、ラリッサ市の学生たちですが、彼らも暖炉からの有毒ガスで命を落としました。
 最後にディミトリス・クリストウラス、引退した薬剤師は三年前の今日、国会の前の無名戦士のモニュメントの前で自らの命を絶ちました。ゴミ箱からその日の食事を漁るというような生活を強いられることを拒否してのことでした。


◯真実の道具と、不正を糺す道具

ギリシャ国会によって設置された「公的債務に関する真実」委員会は社会と民主制に仕える貴重な道具です。真実のための道具、不正義を質すための道具、尊厳のための、社会と民主制を守るための道具、社会を殺してしまうような選択に対して調査と抵抗をするための道具、人々と社会と、ヨーロッパのリーダーシップを目覚めさせる道具、そして連帯のための道具です。
 この国を導くすべての人たちが今日、ここに参加しています。共和国大統領、総理大臣、議会の議長及び副議長、司法の代表や各種独立機関の代表といった人々です。この事実が、この債務監査をやり遂げるという意思を反映しています。
 専門的な準備と、この招待にお答えいただき、時間を費やしていただいた人々、彼らの知識と労力を通して貢献していただいている人々の経験と関心が、成功への保障です。
 私は、この呼びかけに答えていただいた全ての人々、ギリシャ国内からのみならず、国外からいらっしゃっている専門家の方々に、特別な感謝を表明したいと思います。

紳士淑女のみなさま、私はここに、国会議長として2015年4月4日に行われた国会決議1448 番、公的債務の発生と増大についての真実を調査し、請求されている債務を監査し、ギリシャ国会と債務の問題を扱う欧州議会や他国の国会および国際機関の国際協力を促進し、また社会と国際コミュニティおよび国際世論を刺激し議論を喚起する目的のために、ギリシャ国会特別委員会を設置することを宣言します。この委員会は「債務の真実」委員会と称されます。特に、この委員会と欧州議会の間の調整を引き受けてくれたソフィア・サコラファおよび他国の国会に感謝を表明します。また、国際チームの学術的な調整役を引き受けると即答していただいたエリック・トゥサンにも感謝します。また、議会事務局、特に国際チームのワーキンググループを設置するにあたって尽力していただいた、議会の財務事務局、議会学術事務局に感謝します。この宣言の後、私は内閣に対して、この開会式を共和国大統領プロコピス・パヴロプロス氏に報告するよう要請します。



3. CADTM代表エリック・トゥサン演説(英語版

この国の最高機関に対して、最高の敬意を表明します。まずギリシャ議会議長に、ここアテネに集まった全ての代表者や海外からの専門家が、「債務の真実委員会」で役割を担えることに感じている大きな満足を表明します。この満足感は、共和国大統領や総理大臣のみならず、何人もの重要な閣僚がた、様々な機関や政府の方々から、ギリシャのような国々がいかに現在の困難に取り組むかを理解する助けになる、この公共的な健康管理という仕事をサポートすると伺えたからです。なぜ、ギリシャの人々は年間生産額の180パーセント近くにもなる富を払わされなければならないのでしょうか?
 これが、この委員会の、また国際的な、あるいはギリシャ国内からの参加者の仕事です。この人々の大きな能力と可能性は、この瞬間支払いを求められているギリシャの債務に関する厳格な分析を進めてきたこの三日の取り組みからも明らかです。

最終レポートはギリシャ議会に提出されます。報告書は、ギリシャの債務から、不公正な債務、違法な債務、汚い債務および持続可能でない債務を同定します。簡単に定義を説明します。「不公正な債務」とは国民一般の人々の利益に反し、少数の特権階級のために起債された債務を指します。「不法な債務」とは国の法律や憲法に反している債務を指します。「汚い債務」とは、基本的人権に反し、また国が批准し署名している条約や協定に反することを顧慮しなかった債務です。「持続不可能な債務」とは、政府に市民の基本的権利を約束できなくなるようなレベルの返済を貸すような債務です。
 「汚い債務」は、多くの国際法学者の議論や国連のレポートで、さらに三つの基準が示されるようになってきています。すなわち、国民一般の合意の欠如、貸付の結果から国民一般が受ける利益の欠如、この二つの基準についての債権者が自覚していること、です。

現在「トロイカ」として知られる組織とギリシャの債務について深く考えていきましょう。私たちは、これらの債務が締結された時、ギリシャの国民一般が債務契約について分析し、同意したかどうか、また法的な代表者たちの債務に関する決定が有効なものだったか、について考えます。これは、国民一般の債務に関する「合意(コンセント)」があるかという問題を提起します。次に、これらの債務の影響を調べ、また国民一般の利益に奉仕したか、ギリシャ国民一般の生活を向上させたか、ということについても調べます。最後に、債務の支払いを要求している債権者が、債務契約の締結時に、債務によって生じる状況が国民一般に被害を与えると自覚していたかについて調査します。
 債務の状況に関して綿密な分析を行い、その仕事が終わった時に私たちは結果を発表します。どのような結果になるかと、仕事を始める段階で聞かないでいただきたいと思います。私たちは、この作業を、可能な限り厳格に行い、すべての必要な文章と、負債が生じるに至ったプロセスの主要な関係者への審問がが十分に精査され分析され、委員会が十分な合意に至った時には、私たちの結論を公表します。

紳士淑女の皆様、友人がた、ゾエ・コンスタントプロウ議長、欧州議会のソフィア・サコラファ議員、皆様の成そうとしていること、そして私たちの出来うる限りの助力は、歴史的といってもいいものです。公的な会計に関する民主的透明性のプロセスという観点から、世界の他のいかなる議会も、これほどのことを成し遂げたことはありません。このプロセスには、債務監査への市民参加、議会テレビ放送を通じた国民一般に対する完全な情報提供を維持することが含まれます。
 もっと多くの人がギリシャ議会テレビ放送を見るでしょう。ほとんどの国で、議会放送というのは空っぽの座席の前で行われる、息苦しい議会答弁を流すだけの退屈なものです。ここではより組織されています。もちろん議会答弁は放送されますが、より大きな関心を引くような、本日のようなイベントも放送されます。
 もしこの国の重要人物が参集する4月4日の会議に字幕をつけることができたら、その番組はソーシャル・ネットワークを通じて拡散され、世界中で見られるであろうことを請け合います。本当のデモクラシー、透明性、真実の追求といったことを渇望している世界中の市民はこの出来事の目撃者になりたいでしょうし、彼らにチャンスが与えられさえすれば、真実を打ち立てる役割の一部を担いたいと思うでしょう。これこそがデモクラシーです。これこそがデモクラシーに必須の条件でありながら、民主的であると主張する国々でもめったに見られない実践です。
 国際社会に対して公式に発表したプロジェクトに応じて、この惑星の鍵となるポイントから耳を傾けられていることに気づくでしょう。世界の99パーセントの人々が、なぜ自分たちの生活が、一般的に言って市民の手による民主的なプロセスによって考慮されたことがないような類の債務に左右されなければいけないのか、知りたがっています。
 債務の真実委員会のメンバーすべてに変わって、心の底からの感謝を表明します。ありがとう、みなさん。ありがとう、ソフィア・サコラファ。ありがとう、ゾエ、コンスタントプロウ。ありがとう、世界に対してデモクラシーの見本を見せようとしてくれているこの国のすべての当局関係者のみなさん。

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